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ソヴィエト旅行記 (光文社古典新訳文庫 Aシ 7-2)

ソヴィエト旅行記 (光文社古典新訳文庫 Aシ 7-2)

ソヴィエト旅行記 (光文社古典新訳文庫 Aシ 7-2)

作家
ジッド
國分 俊宏
出版社
光文社
発売日
2019-03-08
ISBN
9784334753962
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ソヴィエト旅行記 (光文社古典新訳文庫 Aシ 7-2) / 感想・レビュー

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ケイ

ジイドに対して女々しく弱い印象を持っていた事を謝りたい。ペンを持った彼の強さに敬服。すでにスターリンによる粛清が行われていた1936年。ドイツにおいてはヒトラーが前面に出ている。フランスでは、社会主義革命に賛同する知識人達はソビエトを礼賛していた。その中、ソ連に客として同行者五名と訪れたジイドは、ソ連の真実を見抜き告発する。それについて左からも右からも攻撃を受けたジイドはさらにそれに反論する手記を翌年に発表した。『理想』から『政治』への移行がもたらした執行部の『退廃』と『嘘』をジイドは恐れず暴く。

2019/05/31

ケイ

コンゴ紀行を読んだので、旅行の順に合わせこちらも再読。コンゴでは、現地のエキゾシズムに情感を刺激され、時に冷静な視線を逸脱している印象もあった。ソビエトでは、流される事無く、差し出されたものをそのまま見ず、自らの見方で、ヒューマ二スティックな観点から冷静に見極め、身の危険も顧みず、かける範囲で筆をとり、帰国後に原註の形で補足された文章のみごとさ。共産主義とはともすればどういうものであるか、どういう危険性を孕んでいるのか、理想と現実の乖離の仕方など、一読すべき内容。特にベルリンの壁を知らない世代におすすめ。

2021/10/27

HANA

第二次世界大戦前、共産主義が理想とされていた時代。ソ連に招待されたジッドがその印象を綴った旅行記。本書の凄い所は参加したのが共産圏のパッケージツアーでありながら、理想の国の背後に隠された全体主義を鋭く見抜いている所か。日本にも北朝鮮を最後まで地上の楽園と言っていた自称知識人が多かったけれども、何だろうなあこの違い、やっぱり知性の差かなあ。両者を比較するに本書のような旅行記は如何に党派性を超越するかが肝だと思う。本書発表後「転向」が攻められたが、ジッドのような人道主義者にとってそれは必然だった気もするかな。

2022/04/10

molysk

1936年、フランスの作家ジッドは、招待に応じてソ連を旅行する。社会主義の理想を実現した国家を目撃するために。だが、ジッドが目にしたのは、独裁下で抑圧され、かつてと変わらぬ貧しさに喘ぐ人々と、伸長する官僚制によって理想から貶められた、社会主義の現実であった。ジッドは素朴な人道主義者であった。旅行の前に示していた社会主義への称賛から、一転してその欺瞞を喝破するべく本書を執筆する。現在も、権威主義国家はなくなるどころか、数を増しているように見える。それゆえ、ジッドの愛情ある熱意にまぶしさを感じるのである。

2020/07/27

ころこ

ヌーヴォー・ロマンのジッドが、現実に触れた旅行記を著していたのは、不明にして今回はじめて知りました。この以前に『コンゴ旅行記』を著していて、植民地支配の不当性を強調したために、右派から批判を浴び、人道主義の観点から左派から歓迎されています。ところが本書では、共産主義の問題点を指摘したため、今度は左派から批判を浴びます。この右派と左派の歓迎と批判の通りに真実はないのは今日、間違いのないところです。むしろ我々は、このジッドの目が真実を先取りしているようなことが、今日にも起こっていることに気付くべきでしょう。

2019/10/03

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