戦争と平和1 (光文社古典新訳文庫)
戦争と平和1 (光文社古典新訳文庫) / 感想・レビュー
molysk
ナポレオン戦争下のロシア帝国。5つの貴族家を中心に、物語は進む。散財と放蕩、財産への渇望、快活な子どもたち、病床の老人、出征を決意する当主。各家がそれぞれの情景を見せたのち、若者たちは戦地へと向かう。英雄ナポレオンに率いられた精鋭フランス軍。撤退と反攻を重ねるロシア軍に、アウステルリッツの戦いが迫っていた――。身重の妻を残して戦場へと赴く、高潔なアンドレイ。凡庸な庶子と見くびられるも、莫大な財産を受け継いだピエール。ナポレオンの侵攻に立ち向かう数多くの人々を描いた、叙事詩を思わせる壮大な物語が幕を開ける。
2021/10/16
南北
19世紀ロシアを描いた雄大な小説。以前北御門訳と藤沼訳で既読。「我々の祖父たちが喋るばかりか考えるのにも使っていたエレガントなフランス語」を使うロシア貴族がフランスと戦うことができるのかが通奏低音となっている。過去に何回も翻訳されてきたこの作品で第1編2章のリーザの産毛はこれまで「上唇」に生えているとする翻訳しかなかった(ドジョウじゃないのだから「上唇」はないでしょう)が、今回はじめて「鼻下」と訳されたのはよかった。人物のちょっとしたところを捉えてその人物を的確に描写していくところに感心した。
2020/11/27
kazi
まさに偉大な小説ですね。令和となった現代においても新訳に取り組んでいただける翻訳者や出版社があることに感謝です。訳が改まって非常に読みやすくなったと感じました。本を開けばそこは19世紀ロシア。ピエール、アンドレイ、ニコライ、名前を上げ始めればキリがない、多くの興味深い登場人物たち。人は何を想いどこへ向かって生きていくのだろうか?真に偉大な行為とは?人生の意義とは?登場人物たちの魂の遍歴を追いかけながら、多くの事を考えさせられます。アウステルリッツ会戦前、アンドレイは何を想う?第二巻へ続く・・。
2020/12/18
きゃれら
いよいよ挑む超大作。読みごたえがあり、ページをめくる手がとまらない。kindle読みですが、「批評の教室」(北村紗衣・著)の教えに従って登場人物リストをGoogleドキュメントで手作りしているのが物語に没入できていいのだろう。(紙なら栞にあるらしいけど…)前半のホームドラマでは、登場人物の心の動きは普遍的。後半の戦争シーンは、第一次大戦前の、今と比べると牧歌的とさえ言えそうな戦闘の様子なのだが(無線もない)、その心象風景はやはり普遍的なのだろうか。比較するならベトナム戦争文学読まないと。すぐさま2巻へ。
2021/09/23
おにぎり
熊を捕まえてきて女芸人の館に連れ込み、警官と背中合わせに縛って川に放り込んだピエールはどれだけ器用な人間なのか。人類は神の掟を忘れ、互いに殺し合う性質に侵されると手紙に書いたマリヤの文筆センスがにじみ出ている。ニコライに財布の行方を追わせるデニーソフ。rの発音が出てこない言葉に何度も吹き出しそうになった。ロフコフにしてもボルコンスキーにしてもナポレオンの頭角を深く意識に刻み込んで生きている。
2021/08/01
感想・レビューをもっと見る