未成年1 (光文社古典新訳文庫 Aト 1-22)
未成年1 (光文社古典新訳文庫 Aト 1-22) / 感想・レビュー
おたま
実は『未成年』を読むのには、かなり躊躇した。前評判では、やれ「カオスだ」とか、「失敗作」とか、「難解」とか、いろいろ否定的なことを読んだ。でも、あの亀山郁夫氏の新訳で出たと聞き、それならばと思い読んでみた。まずは亀山さんの「読書ガイド」に目を通す。その冒頭にも「人間関係のあまりの複雑怪奇さ」、「作品全体を包み込む混沌とした気分」と書かれている。「やっぱり」と思いつつも、本文を読む。アルカージーという20歳の青年の手記。これまでのドストエフスキーにはない一人称での語り。これが曲者だった。⇒
2021/12/15
ケイトKATE
ドストエフスキーの五大長編小説の中で最も人気がなく、語られない小説である『未成年』。今回、亀山郁夫が新訳してくれたので読んだ。『未成年』は主人公のアルカージーの独白で進む。アルカージーは貴族のヴェルシーロフと農奴のソフィヤの間に生まれた庶子であった。そのため、周りから蔑まれることが多く、卑屈な性格を持つようになった。20歳になったアルカージーは、ヴェルシーロフと出会うが嫌味や悪態ばかり突く。アルカージーの言葉は、憎しみに満ちているが拒絶までに至っていないのは、心の底では愛を求めているように思えてしまう。
2023/03/17
amanon
この『未成年』という邦題、実は「青二才」とか「未熟者」と言う意味合いの方が本来強いのではないか?と思わされるくらいに、主人公アルカージーの中二病的な言動にイラつかされる(笑)。新潮版の旧訳で読んだ時は、今一つピンとこなかったけれど、新訳で読み返すことによって、作品の魅力…とりわけ、佐藤優が五大長編の中でも、なぜ本作を特に推していたかが理解できたような気がする。とはいえ、そう言いながらも、他の長編の定石となっている読者をうんざりさせかねないあの過剰なお喋りや、デモーニッシュな人物がいないのは物足りないが。
2023/03/31
ひと
ロスチャイルドになることを夢見る20歳の青年アルカージーの成長の物語。地主貴族ヴェルシーロフの私生児のため出生を恥じていて父とは無縁の人生を過ごしてきたがある日、父が突然現れ、同時にいくつかの事件が起きる。。複雑な人物相関図を書きながら読みよく解らないところもありますが、2巻に進みます。
2023/05/03
しおり
思春期がそのまま熟成された感じの主人公。「自分の理想」を持っており、実現には人間関係を捨てて孤独になることが必要だと考えている。理想も突き詰めれば力による孤独だしこのひねくれ方には共感できる部分もある。複雑な生い立ちを作り出した父に対して憎悪する一方ほかならぬ父に認めてほしいとも思っている。母や妹に愛情を持っているけど理想の障害になるとも考えている。気難しくて傲慢なのに身を挺して他人を助けることも厭わない。この未成年はめちゃくちゃだ。そんな未成年視点で物語が進むから見えている物が本当に正しいのか怪しくなる
2022/06/22
感想・レビューをもっと見る