涅槃の雪 (光文社時代小説文庫)
涅槃の雪 (光文社時代小説文庫) / 感想・レビュー
初美マリン
不器用な生き方をする与力を軸に天保の改革をしっかりなぞっている。彼を取り巻く人々もかたくななまで不器用、かの鳥居耀蔵さえもぶれない。決して重くないが、しっかり心に残る作品。
2020/06/22
Osamu Ueno
気位の高さ、プライドといった人間の持つもっとも厄介なしろものに、どう折り合いをつけて人は社会生活に向き合っていくべきかを、西條さんは作品の中に取り組むことで問題を投げかけています。そんなプライドは隅に置いて、ひたすら課せられた仕事に邁進する町の治安を取り締まる与力の主人公は、武骨で質朴剛健が似合う男です。彼の人柄か慕って来る者、全幅の信頼を寄せている上役、とがめを受けたにも関わらず、彼の善意に心を許す者達が物語の核になります。時代は質素倹約を旨とし、贅沢三昧を禁止した天保の改革。↓続く
2015/05/31
藤枝梅安
讃岐に流された後の鳥居耀蔵については、宮部みゆき さんの「孤宿の人」を読んでいただきたい。装画は北村さゆり さん。
2015/08/21
タイ子
「やい、やい!この桜吹雪を見忘れたとは言わせねぇぞ」の遠山の金さんが登場。ま、こんなことばっかりはやってないんですけどね。その遠山景元の片腕として北町奉行の与力を勤める高安門佑が主人公。天保の改革を推進した水野忠邦のえげつないやり方に憤る江戸庶民。対する遠山への好評判がさらに水野に輪をかけて政にしばりをつけていく。遊女だった女性を女中に入れた門佑の心にいつの間にか芽生える愛。南北町奉行を取り締まる2人の奉行の生きざまと門佑の正義感をじっくり読ませる。そして、ラストに思わぬ涙腺崩壊。これぞ時代小説の醍醐味。
2019/04/14
greenish 🌿
(単行本で読了)吟味方与力・高安門佑は、ある事件をきっかけに、元女郎・お卯乃を屋敷に引き取る。粗野なお卯乃ではあるが、話し相手としては悪くない。そう思った矢先、天保の改革が発布される。生気を奪われるようなお上の厳しい締め付けに立ち向かう気骨ある与力と市井の人々の意地と気概を描く ---水野忠邦に遠山景元、鳥居耀蔵。江戸の世の政道の表と裏、そこに暮らす江戸庶民の生き抜く力を存分に味わいました。そして、弟への慙愧の念を抱くお卯乃の来し方、高安・お卯乃に訪れる物語の結末に、痛みと温もりを感じる読後感でした。
2014/11/13
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