インサート・コイン(ズ) (光文社文庫 よ 19-5)
インサート・コイン(ズ) (光文社文庫 よ 19-5) / 感想・レビュー
セウテス
本作は、ゲームに対する強い思いから描かれた、ミステリ作家が書いたゲームについて語る本となるだろう。正直、作者がこうした作品を書くとは思ってもいない私は、途中までどんな形の本格ミステリなのかと、かなり悩んで読んでいる。マリオからドラクエまで、自分も体験した思いを共感出来たのは、この歳になって少し不思議な思いだ。型に囚われない作者の思考は、王道を遊び究めようとリスペクトし続けた、その果てに在るのかも知れない。青春時代を引きずった様な主人公の心情とゲームが見事に交錯し、他にない日常の謎になっていて素晴らしい。
2022/10/21
Bugsy Malone
ゲームを題材にした青春ミステリーということで、あまりゲームをしなかった自分としては詠坂さんとはいえ長らく積みっぱなしになっていた1冊。結果、ゲームに対する考察はもの凄く興味深かったし、切ない様な元気付けられるような、そんなニュアンスがとても良かった。あえて発表順を変えた掲載も洒落ていて「なるほど」と。「遠海事件」や「人の町」に本作、詠坂さんの多様さには感心させられてしまうばかり。続編の「ナウ・ローディング」も是非とも読まなければ。
2021/12/14
ミーホ
ゲームを頑張る意味がわからない。人がやってるのを見てるタイプでした。が、今はマイクラにハマり、きっとおばあちゃんになってもやってそうと自分で思ってます。ちなみにピースフルです。敵出てきません。でも面白いです。 いきなりマリオの薀蓄めいた会話から始まる本書。ゲームかぁ・・・と思いつつ読み出すと馴染みのないゲームライターの世界にジワジワとハマりこむ。お馴染みの詠坂雄二も出てきてこんにちは。意外や意外。格闘技とか全く興味無いのに、「俺より強いやつ」が1番面白かった。そういえば、映画の「ファイトクラブ」も好き。
2017/01/23
geshi
TVゲームに関する5つの謎の物語。青春ミステリの題材としてゲームが懐かしさと痛みを伴って描かれるようになるとは、時代が変わったもんだ。ゲームへの考察もしっかりしていて、ゲームデザインや構造を踏まえながら物語内に溶け込ませている巧みなつくり。『残響ばよえ~ん』がベストで、自分にもこういう初恋未満の頃があったなぁと苦くも愛おしく思い返し、ぷよぷよで友達と対戦していた頃を懐かしみ、ミステリとして美しい反転を見せる。ドラクエ3の伏線への考察の全てが題名を生かす『そしてまわりこまれなかった』も好み。
2017/05/07
Yuki
詠坂雄二初読み。ペンネームは堀井雄二から、新本格との出会いは「かまいたちの夜」からという筋金入りのゲーム好きミステリ作家が、ゲーム誌ライター・柵馬を主人公に据えて繰り広げる連作短編集。動くキノコを探して直面した不思議、初恋未満な異性との「ぷよぷよ」の思い出、ゲームの「ストリートファイター」とリアルのストリートファイト伝説という「対人戦」に通じるものとは。懐かしゲームの小ネタにクスッとしながらも、アラサーのライターのほろ苦い現実と、書くことへの苦悩とそこに差す微かな光に目を細める。いい本だと思った。
2018/10/24
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