コロナと潜水服
「コロナと潜水服」のおすすめレビュー
ストレスフルな日常の今だからこそ読みたい! 凝り固まった心身をほぐす、ちょっと不思議な物語集
『コロナと潜水服』(奥田英朗/光文社)
緊急事態宣言の期間延長など、新型コロナウイルスの発生から1年以上経った今でも、窮屈な生活を強いられている私たち。奥田英朗の最新短編集『コロナと潜水服』(光文社)には、コロナ疲れで凝り固まった心身をゆっくりとほぐしてくれるような物語がそろっている。
表題作の「コロナと潜水服」は、新型コロナウイルスの脅威にさらされる2020年の日本が舞台。とは言っても、決していたずらに恐怖を煽るような作品ではない。
主人公の会社員・康彦がテレワークに勤しんでいると、5歳の息子・海彦が突然「バアバ、今日はお出かけしちゃダメ!」と叫び、祖母の外出を必死に止めようとする。孫の必死な形相に、祖母はその日行くはずだったコーラスサークルに行くのをやめる。すると後日、そのコーラスサークルからクラスターが発生したことが判明。
それ以降、海彦が何かに取り憑かれたように「ダメ!」と騒ぐと、新型コロナのクラスターや陽性者が判明するようになる。「我が息子には、新型コロナウイルスを感知する能力があるのではないか」と真剣に考える康彦。
ある日、康彦は上司…
2021/2/27
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コロナと潜水服 / 感想・レビュー
ろくせい@やまもとかねよし
心の角を丸くさせた5短編。人のためと純粋に発した利他的おもいやり。しかし、そんな利他に対して求めてしまう利己的見返り。5つの落とし所を記しているか。読後、唐突に「は行」の言葉で感想がまとまった。「は」っとさせた「海の家」の不貞中年妻のふるまい。「ひ」ょうひょうと理不尽さを楽しむ「ファイトクラブ」の窓際中年会社員。「ふ」ーと大きな息とともに自分らしさを確認する「占い師」の恋に悩む女性。「へ」ぇと感心する「コロナと潜水服」での潜水服の役割。「ほ」っとした瞬間に訪れた「パンダに乗って」の人を愛おしく思う気持ち。
2021/08/03
starbro
奥田 英朗は、新作中心に読んでいる作家です。ヴァラエティに富んだ幻想短編集の感動作でした。どれも味がありますが、オススメは、著者の私小説?『海の家』&地元新潟弁が懐かしい『パンダに乗って』です。 https://forzastyle.com/articles/-/58091 1月は、本書で読了です。
2021/01/31
ウッディ
海辺の一軒家で出会った少年の幽霊、リストラ社員たちに勇気と力を与えてくれたボクシングコーチ、コロナウイルスが見える不思議な能力を持つ息子など、奥田版「世にも奇妙な物語(怖くないバージョン)」という感じでした。中古で購入したフィアットパンダが、前の所有者の思い出の地に連れて行ってくれ、素敵な出会いをもたらす「パンダに乗って」が良かった。同年代の作者だけに、好きな曲も含めて一つ一つの思い出が、心の奥をギュッと掴み、胸がキュンとした。巻末にSpotifyのプレイリストがあり、BGMにして優しく読み終えました。
2021/06/24
こなな
『コロナと潜水服』が1番好き。今月入ってDisneyの『あの夏のルカ』を観たからまだ私の中で消え去らないうちに潜水服がまた登場したわけである。コロナのこんな時代だからこその発見がある。帯の“小さな救世主現る”その通りなのだ。この世の人ではない人が出てくる短編集。Spotify、QRコードで作中の曲が聴ける。温かい優しい世界に誘ってくれる。『パンダに乗って』は亡くなられた前オーナーの思い出巡り。パンダが連れて行ってくれるのだ。間瀬サーキットが懐かしい。奥田先生の優しさあふれる短編集。感動で胸が苦しい。
2021/07/29
まちゃ
主人公の周りで起こる不思議な出来事を扱ったハートウォーミングな5編の短編集。奥田さんらしいユーモアを感じる一冊でした。面白かったです。一番のお気に入りは「パンダに乗って」。作中登場曲+αで選曲された巻末の【Spotifyプレイリスト】も新鮮でした。
2021/02/07
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