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たけこのぞう

たけこのぞう

たけこのぞう

作家
大濱普美子
出版社
国書刊行会
発売日
2013-06-19
ISBN
9784336056665
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たけこのぞう / 感想・レビュー

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カフカ

六篇からなる幻想譚。静謐で美しい文章と、仄かに纏う哀愁のヴェールが独特の幻想的な世界観を生み出している。読んでいる最中は、もう少し幻想味や怪奇味が欲しいなと感じるのだけど、読み終えてみると、いつの間にやらあちらの世界に迷い込んでいる感覚が妙に心地よく、これはこれでとても好き。この中では一番怪奇味の強い「フラオ・ローゼンバウムの靴」と、静かな余韻を残す「たけこのぞう」がとりわけお気に入り。今後、新作が出る度に追いかけていきたいと思える作家さんです。

2022/10/26

優希

思わず「たけのこぞう」と読み間違えそうになります。不思議な感覚の漂う短編集でした。幻想と奇想が溶け合いつつ、時折感じる生々しい現実味。控えめで繊細な文章から感じられる失われたものへの想いとよく知っていたはずのものの中身のよく分からない部分。それぞれのイメージはとても怪異的で怖いものですが、落ち着いた筆致だとそれが美しく感じます。昭和の懐かしさがありながらも曖昧な時間が流れているのが何とも言えない感覚に陥りました。じわじわと闇に飲み込まれていきそうでした。

2015/03/23

あたびー

どれも隅っこにほんのりと怪奇味のぼかしをつけたような短編小説6篇。間取りの描写が出てくるものが多い。作者はドイツ在住ということで、海外在住の主人公のものが半分。どの主人公も独身で身内に先立たれることの多い人物。巻末の表題作「たけこのぞう」は象ではなく像のこと。芸術家肌の奇矯な母親との暮らしを描いたもの。「猫の木のある庭」離れを借りて暮らす女性の飼い猫と大家夫妻の触れ合いと猫の謎めいた失踪。「フラオ・ローゼンバウムの靴」はこの中で一番怪奇味があり面白かった。孤独死した隣人の遺産の靴を履いたら…

2021/09/04

かもめ通信

3冊目の短編集『陽だまりの果て』で、第50回泉鏡花文学賞を受賞した大濱普美子さんのデビュー短編集。ある意味すごく写実的なのに、その一方でとても幻想的で、全くありえなにのに、すんなりと受け入れられる。どことなく懐かしく、とても切なくて、時折背中に寒気を感じ、一見どこにでもあるありふれた場所のようでありながら、二度とたどり着けないような不思議な世界に迷い込む。出し惜しみするわけではないが、どんな話だったかとあれこれ説明する気にはなれない。ただただこの世界に浸っていたいとしか。たとえ、溺れてしまっても……。

2023/01/25

びっぐすとん

図書館本。初読作家さん。確か皆川博子さんが『14番線上のハレルヤ』をお薦めしていたのだが、図書館になかったのでこちらを借りてみた。好きな作家さんのお薦めする作品だからといって、必ずしも自分の好みとは限らないけれど、これは好きだな。不思議な話ではあるけれど、現実に寄り添った白昼夢のような不思議さで、不気味だったり後味が悪いということはない。「フラオ・ローゼンバウムの靴」「盂蘭盆会」が特に良かった。『14番線~』も探して読もう。

2020/07/11

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