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山の人魚と虚ろの王

山の人魚と虚ろの王

山の人魚と虚ろの王

作家
山尾悠子
出版社
国書刊行会
発売日
2021-02-27
ISBN
9784336070999
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山の人魚と虚ろの王 / 感想・レビュー

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KAZOO

山尾さんの小説は以前に短篇集を読んだことがあり、かなりフィーリングがあったように感じました。この作品を読んだときにはあまりイメージがなくどのように考えていいのかあまりわかりませんでした。ただ再度読み直してみると、むかし泉鏡花が登場したときもこのようなものであったのかもしれないと考えると比較的わかりやすさが出てきました。しかしながら私にとってはこの山尾さんよりも多和田葉子さんの方がわかりやすい気がします。

2022/08/05

アキ

山尾悠子初読。幻想的で夢の中のような不思議な世界。妻との新婚旅行中に亡き母と会い、夜の宮殿で<山の人魚団>という舞踏団に<虚ろの王>という実体のない存在の、妻をも巻き込んで、舞踏と浮揚にまつわる物語。映像化したら面白そう。確か著者は岡山出身。岡山の蟲文庫でサイン本買ったのを思い出した。

2021/05/11

コットン

今回の装丁は嬉しいミルキィ・イソベ氏の函入りで物語に合ったデザインが良い。ストーリーの急速な場面展開やフラッシュバックのような効果が現実的でありながら夢を見るような描写の数々はカルトなシュールレアリズム映画を見るようでもあり楽しめる1作。

2021/05/08

HANA

新婚旅行の話。らしいのだが粗筋を把握するのは非常に困難。著者の小説は前からそうだったのだが、先の『飛ぶ孔雀』あたりから散文詩、象徴詩の域に入っているような気がする。『科学の結婚』の如くそこに隠されている意味を探すもよし、随所にみられる言葉が持つイメージに翻弄されるもよし。読者たる我々に出来るのはその言葉が作り出す世界、絢爛たる伽藍に圧倒されその内部を迷い歩くだけである。思うに稀に言葉だけで世界を作ろうとしてしまう作家が一握りいて、著者はその一人だと思う。その世界を垣間見る事が出来る事を今はただ寿ぎたい。

2021/04/06

けろりん

ゆらり、ゆらん。何処から降りて来たとも知れぬ鎖の先に点る灯り。廃嫡された天子の首飾りに似たシャンデリアが一瞬照らす、とろりとした漆黒に象嵌された夜の宮殿の物語。それは病床で見る妄想か、みどり色の酒精が誘う白日夢か。山の人魚が宙を舞う。稚い新妻が人造の毛皮に麺麭をそっと包む。外つ国で疾うに死んだ母が、若き日の儘の美貌で、紅い実を吐く。吊り下げられた豪奢な衣装。機械仕掛けの王のからっぽの外套。ゆらん、ゆらり。鎖の揺れる音に、撥条のきしみが交じる。きみょうな新婚旅行の十月十日後、生まれたみどりごの瞳に宿る虚ろ。

2022/04/26

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