〈あの絵〉のまえで (幻冬舎文庫 は 25-6)
〈あの絵〉のまえで (幻冬舎文庫 は 25-6) / 感想・レビュー
bunmei
今年、最初のレビュー。人生に傷ついて心が折れそうになった人々が、また新たな一歩を歩み始めようとする、胸が熱くなる物語。そんなヒューマン・タッチなエピソードが、6つ掲載された短編集。マハ作品らしく、アート小説としての楽しみも兼ねて、各エピソードに、ゴッホ、ピカソ、セザンヌ、クリムト、東山魁夷、モネの6枚の絵画を寄り添わせている。いつもの様に、スマホで登場する絵画を検索して、改めてその味わいにも浸りながら読み進めた。著者が紡ぐ言葉の優しさや憂いというものが、残照のように心の奥深くに沈み込んで来る作品。
2023/01/05
とし
〈あの絵〉のまえで。気持ちよく読み終えました、地中美術館へ行ってみたいです。
2023/01/17
piro
読むと漏れなく美術館に行きたくなる掌編集。サラッと読めてじんわり温かな気持ちになる作品ばかり。見た事がある作品も幾つか登場し、知人に会った様な親近感が湧きました。ストーリー的には『ハッピー・バースデー』が好みかな。『豊穣』のスガワラさんのカラッとした優しさが素敵。クリムト「オイゲニア・プリマフェージの肖像」、モネ「睡蓮」が特に見てみたい。登場する作品は全て国内の美術館の所蔵。比較的訪れ易いので、是非会いに行きたいです。各美術館の学芸員による解説も良く、満足度が高い一冊でした。
2022/12/30
エドワード
日本中に多くの美術館がある。世界の名画が鑑賞できる。普段は感じないが、実は驚くべきことではなかろうか。広島、岡山、箱根、豊田、長野、そして直島。この中で訪れたことがあるのは岡山の大原美術館だけだけど、その環境の良さ、展示作品の立派さには感動した。日々の生活や夢を追って進み続ける日常の中で、ふとしたきっかけで鑑賞した絵画に力をもらう。疲れが吹き飛ぶ。そういうことは、確かに、ある。音楽も、そうだ。広島市のゴッホ。豊田市のクリムト。いつか観てみたい。東山魁夷の「白馬の森」の章は息子が親に先立つ話で悲しかったよ。
2022/12/22
速読おやじ
アート小説と言えば原田マハ。実際の美術館と絵画を題材に、派手ではないけれども小さな奇跡の物語に読者に勇気や希望をもたらしてくれる。帰りの電車で読みながら思わず落涙したのが「豊穣」と「聖夜」。そして、僕が大好きなクロード・モネの睡蓮が出てくる「さざなみ」は何かとうまくいかない人生の中でもがいている主人公の女性を応援したくなるストーリーだ。倉敷の大原美術館や箱根のポーラ美術館など実際に行ったことのある場所も出てきて記憶を辿ることができるのも醍醐味。睡蓮がある四国の地中美術館もぜひ行ってみたい。
2023/01/12
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