また、桜の国で (祥伝社文庫)
また、桜の国で (祥伝社文庫) / 感想・レビュー
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
須賀作品は、『神の棘』『革命前夜』に続いて3作目。戦乱のヨーロッパものはこの人に任せておけば間違いない。第二次世界大戦時にワルシャワでおこったこと。他国の蹂躙を受け、自由を取り戻すために戦ったポーランドの人々。そして、ただ、人間として死ぬために立ち向かったユダヤの人々。この国のために、自分に何ができるのか。そんな時代を、国を超えた信頼、そして友との友情のために熱くそして強く生きた若者の物語。いつか、また、桜の国で。最後に交わしたその約束が、叶うことを・・・
2020/03/15
サンダーバード(読メ野鳥の会怪鳥)
良書でした。ナチスドイツの足音が目前に迫るポーランド。そこに赴任した若き大使館員棚倉。戦争の回避を、戦争の早期終結を模索し、自ら決意して行動を起こす。もちろんフィクションだからこのような事実があったとは思わない。だがリトアニアにユダヤ人亡命に尽力した杉原千畝がいたように、ポーランドにもこうした日本人がいたとしても不思議ではない。「覚えておくといい。濫用される時は必ず、言葉は正しい使い方をされていない」確かにその通りだと思う。この作品が高校生直木賞に選ばれたと言うのも実に興味深い。★★★★
2019/12/26
佐島楓
私は日本語とせいぜい英語くらいしかわからないが、他の国のほとんどの言語に、愛や友情、理念、理想、信仰といった共通の意味を持つ言葉が存在する理由が理解できた。人間のそうした善の部分を少しでも信じたい。また暗黒の世の中にさせないためにも。
2020/01/03
ピロ麻呂
2016年下期直木賞候補作品。ヒトラー率いるドイツ軍がポーランド侵攻…日本の教科書では一行で記される第二次世界大戦の出来事。しかし、ポーランド国民にとってはいかに悲惨な戦争であったか…ヨーロッパ戦線の一連の流れも分かる良作。戦争を回避しようと、ユダヤ人たちを救おうと奔走した日本の外務官がいたこと、ヨーロッパで最も親日と言われるポーランド…とても勉強になりました。著者の豊富な知識と、緻密な調査がないと本作は書けないですね。須賀しのぶ作品、もっと読もう!
2020/05/23
ユメ
第二次世界大戦前夜に外交官としてポーランドに赴任した棚倉慎。彼とポーランドの数奇な縁を通して、侵略されたポーランドから見る「過酷だが美しい」世界が描かれる。人の死がありふれた光景になる環境でも、真心と信念を忘れずに生きる人たちがいた。どんな正義の下でも、戦闘は残酷な行為だ。それでも、立ち上がる彼らの中には美しい感情が宿る。その対比が狂おしく胸を締めつける。夕暮れ色に光る瞳と、彼らが夢見た桜を、私も忘れることはないだろう。慎が見た世界を、この先何度でも読み返したい。記憶を語り継ぐことの意味を心に刻むために。
2020/01/12
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