人間水域 (祥伝社文庫)
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人間水域 (祥伝社文庫) / 感想・レビュー
ナキウサギ
この本を読んでしばらくした頃 友人にたまたま、こう語る作家がいると紹介された。それが、佐藤優氏。現代は自己愛型人間が過度に増殖中らしい。自己愛が過ぎると自己中心的になりやがて傲慢になり、権力でやりたい放題になる、一種のパーソナリティ障害を患う。本人に自覚はないだろう、、本書もこの通り 人の恩をなんとも思わず、私が、私がと周囲に振る舞う。。でも決して強くはなく崩れやすい歪んだ愛だからいつかは、引きずり降ろされ泣き狂う。。松本清張のいつもの突き詰める勢いのない別の感じがまたよかった。
2021/01/20
竹園和明
松本清張1970年の作品。女流水墨画家としてライバル関係にある久井ふみ子と滝村可寿子が、取り巻きの支援者らの懐に入り込んで頂点を目指す。ふみ子と可寿子は互いに相手を強烈に意識し合い、思惑を抱いて寄ってくる男達を利用しながらのし上がろうとするが…。カネを翳して寄ってくる男達の下衆な思惑に対し、その美貌と武器を最大限に利用し成り上がろうとする2人の上昇志向が凄い。ここに描かれた世界はあらゆる業界で手段として為されているものなのだろう。大きな庇護のもとでのし上がるための手段。そこを突いた松本清張の眼力が冴える。
2022/12/31
うーちゃん
前衛水墨画の世界を舞台にした、女たちの熾烈なサバイバル。松本清張版『イブの総て』のような、華やかな芸術の世界におけるドロドロの人間模様が見どころ。昔の作品なのでさすがに前時代的な価値観だなあと思わせる部分もあるが、それでも面白い。いつの時代も、みんなドロドロがすきだもの(決めつけ)。
2023/09/27
ランラン
2人の女流画家を中心に話は繰り広げられるが結末が何ともいえない物足りなさを感じた。意図的にそうしたのか、自分の想像力がないのかどちらだろうか。
2022/05/19
くーすけ
これぞ松本清張。書かれたのは1961〜1964年。美貌の新鋭水墨画家ひさ子。パチンコ屋の親父の世話になりながら、財界や水墨画壇の重鎮に取り入り、地位を築いていく。ライバル可寿子も似たようなもの。あたかも池の中で綺麗な錦鯉が泳ぎ回るかのよう。だが、綺麗に見える池の水はどんどん淀んでいく。新聞記者の島村は、彼女たちと関わりつつ、冷めた目で彼女たちを見る。そして、新たに由利子という稚魚を見つける。男たちに頼らなければ生きていけない女たち。力で女たちを支配する男たち。女の強かさは感じられない。哀れ。
2020/05/17
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