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源実朝 (ちくま文庫)

源実朝 (ちくま文庫)

源実朝 (ちくま文庫)

作家
吉本隆明
出版社
筑摩書房
発売日
1990-01-01
ISBN
9784480023766
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源実朝 (ちくま文庫) / 感想・レビュー

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yumiha

思ったより読み易かった吉本隆明。前半はまるで歴史書のように延々と実朝が置かれた状況を読み解く。兄頼家の暗殺など鎌倉の武士団(惣領と庶子の繋がり)から、いずれ自分も兄のような定めと覚悟していたようだ。宋へ逃げ出す(?)ための船を建造していたことは初めて知った。その歴史に立って、後半の実朝の和歌についての考察がある。こっちを読みたかった本だけれど、万葉の和歌はすでに死語も多く、あまり読み取れなった。「人間の関係にたいする断念を秘め」「〈事実〉を述べて歌の〈心〉とする」実朝の特徴だけはなんとなく見えた。

2016/06/13

かみしの

吉本隆明による実朝論。大きく分けて「史実としての実朝」「聖化された実朝」「実朝と和歌」の三部から構成されています。『吾妻鏡』は実朝の聖化をモチーフとした史書であると吉本さんは論じますが、その吾妻鏡を引用しながら、実朝をキリスト的聖人に仕立てあげた太宰治は、或いは無意識的にそのことを感じ取っていたのかもしれません。実朝の歌の特徴として、景物は事実を叙するに留まり、メタフィジックな感情の位相が背景に現れてくる、というのを指摘していますが、かなり鋭いと思います。死の意識に付き纏われた実朝の悲しみの深さは、恐らく

2013/01/09

chisarunn

実朝には二つの顔がある。ひとつは北条氏の傀儡の将軍として兄の頼家のように逆らったりせず淡々と血筋だけのトップをやっていた。その反面、貪欲に歌人としての自分を磨き上げて、官位を上げて箔をつけた。名前だけの将軍だったからある種の諦観をもって歌道を極めようとしたのか、歌の才能があったから政治は北条氏に(義時に)任せとけばいいや、と思い切ったのか。時系列から言うと兄のように殺されたくなかったら傀儡でいろ、という圧力がかかったのが先だろうな。悲劇のひとではあるが、その歌はどこまでも清冽である。

2021/05/26

yuki

鎌倉を歩いていて立ち寄った寿福寺の源実朝のお墓。「乳房吸ふまだいとけなきみどり子の共になきぬる年の暮かな」といふ歌をよんだひとの心の悲しみが伝わってきました。

2018/04/27

hirom

吉本隆明が確か実朝について書いていたと思って本棚の奥から出してきた。著者独自の歌論、即ち、万葉から古今、新古今に至る和歌の成立と成熟の分析を踏まえつつ、その潮流の中に実朝がどのような個性を光らせており、そこには実朝という人物の何がどう影を落としたのか詳細に辿った著作である。ここには『言語にとって美とは何か』に思想として結実した著者ならではの詩歌論が生き生きと脈打っていると思った。実朝という生涯も、歌人としての実朝も共に面白く読むことが出来た。

2015/12/28

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