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記憶の絵 (ちくま文庫 も 9-1)

記憶の絵 (ちくま文庫 も 9-1)

記憶の絵 (ちくま文庫 も 9-1)

作家
森茉莉
出版社
筑摩書房
発売日
1992-02-01
ISBN
9784480025982
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記憶の絵 (ちくま文庫 も 9-1) / 感想・レビュー

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さおり

あまり本を読まない友人が買ったと言うので便乗して買い、読み始めたのが9月。4か月かけて読了です。森茉莉さんの、幼い頃の思い出、パリでの結婚生活からひとりめの夫との別離まで。新聞掲載されたという短いエッセイをまとめたものだけど、何せ読みにくい。が、そのなかに書き留めておきたいすてきな表現があります。昨日の私はあるセミナーに行ってて、ものすごく凹んだ状態で金沢から帰る電車の中でこの本の最後を読みました。後記に、救われたなぁ。大失敗のさなかにもわくわくした気持ちが湧いちゃう森茉莉さん。見習いたい人生の先輩です。

2024/01/15

りりす

森茉莉の、幼少期の想い出から、結婚と離婚、仏蘭西滞在、晩年の出来事までをふんだんに収録したエッセイ。世に蔓延る粋でない物事を得意の辛辣な意見でオーバーキルなまでにやっつけ(森茉莉的には『ピシャリとやっつけ』と言われたかったかもしれない)る文章と、対して美を礼讃する姿勢に彼女の美の世界を感じ、幼女期の描写には「よくもまぁ此処まで自惚れられるものだ。自分を天使と小悪魔の混血児とでも思ってるのだろうか」と呆れ(これが本当に自惚れてる文章なのですよ)、お洋服や食べ物の描写にうっとりし、とにかく濃密な一冊でした。

2018/09/15

A.T

以前住んでいた家の近所に茉莉さんの妹の杏奴さんが住むお屋敷があったのを振り返りながらゆったり読む。2ページ余の小編が、ざっと120ほどもあるだろうか。父鴎外の作風が江戸時代を想起させるのに、たった1世代を隔たったムスメ茉莉さんの作風は平成の現代から見ても時代を感じさせないほどに生々しい。その現代感覚で描かれる世界が、山の手のお嬢ならではのハイカラさ。あの江戸趣味の鴎外さんの、実際の暮らしぶりがその時代のハイカラそのものだったということにショックを受けたー。

2018/08/26

mm

偶然ですが、父に愛されたマリさんの新聞連載エッセイが2冊続きました。生後最初の記憶のようなものから、離婚するまでの茉莉さんの思い出が率直に書かれている。自尊心は高く、審美眼は厳しく、性格的には子どものまんまで、生活能力皆無、しかしとてつもなく魅力的な彼女に振り回されるのは幸せかも…と錯覚してしまうくらいのアンバランスが美しすぎるモダン。彼女が好きなものについて書くときの筆の伸びやかさは惚れ惚れするくらいで、美しい着物、好きな卵料理、パリで過ごした日々。愛する人への筆は切なく小説のよう。

2017/05/04

あ げ こ

横道にそれつづけるようにして語られる色彩や香りを、そこに含まれる夢ごと、水色の靄を、メリンスの肌目や、冷たい縮緬を感じる皮膚の清潔な官能を、或いは怒りを、翳りや苦さを、都度、逐一、細かに読んで、それが何よりも楽しい。無際限に横道にそれつづけていてほしいし、横道にそれつづけることこそがそのまま書くという行為そのものであることを強烈なまでに思い知らされて、本当に楽しい。例えば幼い日の〈夢をみているのかと思うような、暈りした眼をあいている小さな顔〉を記憶の内にみる、森茉莉の書くための眼にこそ、自分は魅惑される。

2023/08/31

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