ボ-ドレ-ル全詩集 (1) (ちくま文庫 ほ 9-1)
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ボ-ドレ-ル全詩集 (1) (ちくま文庫 ほ 9-1) / 感想・レビュー
夜間飛行
最初の「祝福」という詩は呪われた詩人を産んだ母の恐れと憎しみから始まり、《讃えられてあれ、わが神よ、御身が苦患を与え給うのは/われらの穢れのもろもろを癒す、霊薬として》と激しく神に訴える。『悪の華』の基底に響く神への懺悔は詩集後半で悪魔への祈りに変っていく。詩人はそれを演じる事によって瀆聖の告解室を現前させるのだ。陶酔が倦怠に、憧れが悔恨に転じ、パリの闇を共同墓地の底まで下りてゆくしめやかな韻律に、遠い昔の異国の詩人とはいえ共感した。残虐性への嗜好や生々しく女体を象る詩など、なぜか昭和の匂いがして懐しい。
2015/10/05
ロビン
フランスの大詩人ボードレールの全詩集。退廃や醜悪などのゴシックのイメージが横溢し、陶酔と倦怠の中で饒舌に歌いだされている。象徴派の曙と評されるが、ロマン派の残照をかなり感じさせる詩風であると思う。表現主義の巨星トラークルがボードレールを好きだったというのはわかるような気がした。ギンズバーグが公文書猥褻罪に問われたように公衆道徳良俗紊乱の罪で有罪になったボードレールであるが、詩と人生の間に距離や乖離がないというか、この背徳と狂熱の詩を破滅的な実人生で詩人自身がまさに「生きた」という所に凄みがあると感じた。
2020/12/08
Takashi Takeuchi
新潮文庫版と併読。こちらちくま文庫版はボードレール研究の第一人者・阿部良雄氏翻訳だけあって解説、注釈がしっかりしていて分かりやすく読みやすい。ボードレールの世界観を掴むことができた。口惜しいのは自分の中に詩をしっかり染み込ませる感性が不足していること。感受性の豊な中学・高校生の頃に読んでいたら違ったかな。老後、時間のある時に繰り返し噛み締めて読めばもっと味わえるかな。
2023/06/09
月
悪の華は、阿部良雄(再読)と堀口大学、そして抄訳(象牙集の中から25篇)にて福永武彦訳を読み終える。ここでは敢えてその詩訳の比較はしない。ボードレールは変貌していくパリのなかでも変わらぬ老婆や乞食娘、盲人や寡婦などのなかにその美を感じとる。それは変わりゆく大都会のなかで共に生きる詩人の孤独な深淵の魂の鏡でもある。パリが、群衆が詩人に与えたものは、この孤独の観念であり、悪の華はボードレールの世界そのものの表象である。併読しているベンヤミンのパリ論と読み重ねても興味深いものがある。
2016/08/23
ラウリスタ~
こういった形でボードレールの詩をまとめて読むのは初めて。翻訳でもその面白さが十分に伝わるのがボードレールのいいところか。ほぼすべての詩に簡潔で要を得た注がついているので、読みやすい。ボードレールほどに日本での研究の土壌が深い作家だと、その注は19世紀文学全体を理解する上でも非常に有効なものになる。
2015/10/09
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