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ヴァージニア・ウルフ短篇集 (ちくま文庫 う 18-2)

ヴァージニア・ウルフ短篇集 (ちくま文庫 う 18-2)

ヴァージニア・ウルフ短篇集 (ちくま文庫 う 18-2)

作家
ヴァージニア・ウルフ
Virginia Woolf
西崎憲
出版社
筑摩書房
発売日
1999-10-01
ISBN
9784480035141
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ヴァージニア・ウルフ短篇集 (ちくま文庫 う 18-2) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

ウルフの短篇を17篇収録。中には比較的長めのものもあるが、「青と緑」のようにわずか2ページ足らずのものも。ウルフは初読だが、小説の構築の方法はかなり固有のものであるようだ。よく言えば、それはこれまでにも指摘されてきたように「詩的」だということ。テキストとしての自立性が高いだけに、それらは一層、空間に浮遊しているかのようだ。物語としての時間の進行もまた特異だ。時間が物語を牽引する力を持たない、もしくは、はなはだしくそれに欠けるのだ。登場人物たちもまた、なんだか(悪い意味ではないのだが)妙に影が薄いのだ。

2013/06/21

カナン

近親相姦の被害者であり同性愛者であり、常に正気と狂気の境を行き来し自殺したウルフの短編集はあまりに詩的で、人間の匂いがひどく薄く影も曖昧である。連なる意識の流れは、限界まで煮詰められ彩度を増した後で固められ、丁寧に研磨された人工石のように鮮烈であり、生き生きと美しく描かれるほどに死の香りが絶えず満ち満ちてきて振り払うことが出来ない。たった二ページの「青と緑」が最も印象に残ったが、ところどころ「なぜこんな難解なルビを?」と首をかしげる部分も。翻訳した西崎氏の趣味がかなり強く前面に出てきているようにも感じる。

2019/12/12

最初は、なんて個人的で、とっつきにくい文章なんだ!と思ったけれど(「月曜日あるいは火曜日」「憑かれた家」)、話によっては入ってきやすいものもあり、「キュー植物園」の淡々とした感じ、「壁の染み」「徴」の、ラスト一瞬にして現実に引き戻す破壊力の半端なさなど、静かな快感を覚えた作品もあった。「青と緑」は、その世界を絵で描いてみたいかも。しかしながら原文をよんでこそ味わい深いものなのかな、という気がして、翻訳者の力量が問われるとつくづく思った。わたしの好きな、塩野七生さんや須賀敦子さんなら、どう訳されただろう。

2016/11/24

miyu

前から公言しているが私はウルフが大好きだ。だが好きだからといって彼女の全ての著作を深く理解しているわけではない。読みながら置いてきぼりになったり、よく曲がる道を間違えたりする。何度読んでもそのたびに感じ方が違うから講演の収録集以外は明確なテーマを意識したこともない。ウルフの作品を手にするとき、たぶん私は常に彼女の存在を感じている。読むというより感じている。それは作品の中でウルフ自身が俯瞰で(しかも畳み掛けるように)己を観察しているのを、さらに外側から覗き込んでいるような感覚に近い。素晴らしい短篇集だった。

2020/01/15

井月 奎(いづき けい)

芸術は願望の抽出であり、夢の具体化であり、物語、特に小説はそれを追い続けているのだと思っていました。ヴァージニア・ウルフの物語はそうではありません。彼女の作品はある現象がその意識の中にどう映るのかをつぶさに書き記すのです。彼女の心はガラスのように美しく割れやすいのですが、割れたとしてもその破片一つ一つに起こったことを映すのです。その断片がこの短編集に納められている一つ一つの作品に思えます。彼女の心の純粋な吐露ではないのでしょうか?もろくも美しいその心のきらめきは、時に悲しくさえあります。

2016/08/04

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