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死刑 その哲学的考察 (ちくま新書)

死刑 その哲学的考察 (ちくま新書)

死刑 その哲学的考察 (ちくま新書)

作家
萱野稔人
出版社
筑摩書房
発売日
2017-10-05
ISBN
9784480069870
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「死刑 その哲学的考察 (ちくま新書)」のおすすめレビュー

「人を殺してはいけない」という考え方は立場によって意見を変える 道徳の根本を見つめることで導き出す死刑制度の考え方

『死刑 その哲学的考察』(萱野稔人/筑摩書房)

 ――死刑。人を裁く上で究極の刑罰。その是非については、長年様々な議論が交わされているが、未だに結論は出ない。死刑制度を採用している国は世界的に見ても少なく、国際的な場で日本は度々非難を受けている。死刑制度は果たして認めるべきなのか。罪を犯した犯罪者ならば、合法的に殺されても仕方がないのか。私たちは死刑制度について、どのように考えて意見を導き出せばいいのだろうか。『死刑 その哲学的考察』(萱野稔人/筑摩書房)より、今一度考えてみたい。

■死刑制度を考えるために

 死刑制度の是非について語るとき、その多くは道徳的な視点からが多い。

「被害者の気持ちを考えれば、犯罪者を生かしておくことはできない」 「犯罪者の更生の機会を永遠に奪うのだから、死刑は残酷な刑罰だ」

 代表的な意見としてはこのようなものだろうか。どちらも納得のできる意見であるが、そもそも論として、「道徳」という視点から死刑制度の是非を語ることはできるのだろうか。

■「人を殺してはいけない」という道徳

 誰もが小学校で学んだ道徳。人の善悪について考え…

2017/12/9

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死刑 その哲学的考察 (ちくま新書) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

trazom

死刑という制度を文化、道徳、法理論、感情など多面的に考察するという意味で、とても勉強になる一冊だった。国民の80%が死刑を容認する日本特有の文化を相対主義と普遍主義のどちらで捉えるか、「人を殺してはいけない」という道徳に根拠はあるのか、カントの主張する道徳の絶対性の意味と彼の死刑肯定論との整合性、そして、私自身がこれほど重大な因子になると認識していなかった冤罪の問題など、哲学的考察の対象は深い。人間の応報感情と調整するものとして著者が提案する終身刑の是非については、もう少し自分の考えを整理してみたい。

2020/10/02

GAKU

死刑制度を肯定的、否定的両面から、論理的、哲学的に考察ししている。主張としてはどちらも五分五分といったところ。死刑制度に関する本は今までに何冊も読んできたが、結局のところ是非の明確な答えを出す事は出来ないと思う。最終的にはその人、個人個人の判断でしかないのでは。私としては著者が紹介していた、1700年代の法学者、経済学者であるベッカリーアが主張する『終身隷役刑』に興味を覚えた。

2018/11/20

壱萬弐仟縁

死刑をめぐる考察は必然的に哲学な考察にならざるをえない。本書の目的は、その死刑を哲学的に考察することにある(013頁)。「死刑は日本の文化だから欧米人は口出しするな」と考える人は、さらに「死刑が文化だからという理由で許される理由に入るのはなぜか」という点まで説明しなくてはならない(031頁)。宅間のような犯罪者を処罰するためには、死刑よりも、死ぬまで牢屋からでられない刑罰、仮釈放のない終身刑のような刑罰のほうがよいのでは(070頁)。

2018/01/16

おさむ

先進国ではもはや死刑がある国は日本、韓国、米国のみとなった。既に韓国は執行は長らくしておらず、日米の特異性が際立つ。そして今なお世論調査でも日本人は死刑容認論の方が優勢という。著者は丹念に考察を重ねていく。犯罪抑止力があるとされるが証明されていないこと。人間の処罰感情は単なる寛容さで克服できる代物ではないこと。冤罪の存在を単なるミスとして軽視しては死刑の重大性を見誤ること。正解はないが、まだ日本では廃止に時間がかかるのでは、というのが感想です。

2019/11/01

mana

「死刑」をとことん哲学的に、道徳や政治哲学から論考した本。道徳とは相対的なもので、絶対的に論じることは難しい。しかし、感情論だけで死刑か無期懲役かを選ぶことはもっと難しく危ない。文化的な問題なのか、無期懲役や終身刑などではダメなのか、合法的な殺人とは、といった切り口。死刑に関しては、データ上、犯罪抑止力があるかどうかは分からず、また道徳的に正当化することもできない。そう簡単に答えが出ないテーマではあるが、思考停止せず、国民全体の課題として考えていくことが、犯罪抑止などにも繋がっていくのだろうと思う。

2022/09/06

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