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敗戦後論 (ちくま学芸文庫 カ 38-1)

敗戦後論 (ちくま学芸文庫 カ 38-1)

敗戦後論 (ちくま学芸文庫 カ 38-1)

作家
加藤典洋
出版社
筑摩書房
発売日
2015-07-08
ISBN
9784480096821
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敗戦後論 (ちくま学芸文庫 カ 38-1) / 感想・レビュー

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佐島楓

読みにくくはない文章なのに、頭の中に入りにくい内容だった。著者の中にももしかすると「ねじれ」が存在するのかもしれない、と少し思った。戦争体験者と、そうでない者との「ねじれ」。ちょっとこのいまひとつつかめなかった部分を獲得するために、もう一度精読してみるつもりである。

2017/03/08

ころこ

著者によると、戦後には2つの「ねじれ」があるといいます。ひとつは憲法に代表される戦後平和の価値が、敗戦という結果とアメリカの暴力によって押し付けられた過程です。もうひとつは、敗戦によって我々の「善」の所与が奪われ、いわば「ねじれた」かたちでないとそれがやってこないことにあります。このうち、後者が分かり辛いのですが、昔も前者が理解されず、今もって前者が理解されたとは言い難い状況にあることを、大澤真幸は精神分析の言葉で「排除」と呼んでいます。さて、問題は後者にありますが、本書は後者の分かり辛さに貫かれています

2019/11/12

壱萬弐仟縁

1997年初出。なぜ日本、日本政府は、速やかに戦後責任をまっとうしないのか。根源に、戦後日本社会における国民の基体の不在、戦後日本人の人格分裂があると考える(067頁)。正しくないことを、正しいといいつのれば人格は分裂せざるを得なくなる(081頁)。安倍首相の欺瞞的虚偽に100万人の日本人は集結したのだ。必要なのは、この社会が謝罪できる社会になること、謝罪主体の構築である。方途は、人格分裂の克服以外ない(112頁)。

2015/09/17

yumiha

「悪から善をつくるべきであり、それ以外に方法はない」は、はるか天上の「真理」や胡散臭い「正義」を前提に物事を考えるのではなく、繰り返される歴史の醜さ・愚かさを引き起こすものが自分の内にも存在する人間の本質だから、そこを起点とすべしと理解した。それは『カラマーゾフの兄弟』の苦悩や『歎異抄』の思想と同じものだと思った。また、引用されていた竹田青嗣に興味を持った。これまで戦争を賛美し戦意高揚に協力した文学者には不信感を持っていたのだが、「社会的なリトマス紙で文学を判定する」態度は間違っていると指摘されたからだ。

2016/09/16

しゅん

敗戦により日本は、現在の価値観に立とうとすると自分達を滅亡に追い込んだものを祝福せざるを得ないという「ねじれ」を背負い込むことになった。護憲派も改憲派も、左翼も右翼もこのねじれに無自覚である限りは死者に向き合えない空虚な存在であり、両者は根を同じくした分裂人格の両面に過ぎないという批判は、今の時代に至りより痛烈さを増している。敗戦と向き合った大岡昇平や太宰治の言葉から文学の本質へと踏み込んでいく論はスリルに満ちているし、アーレントの「語り口」に関する考察も面白い。日本の文化全般に関わる問題提起の書。

2017/05/06

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