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日本人は何を捨ててきたのか: 思想家・鶴見俊輔の肉声 (ちくま学芸文庫 ツ 4-3)

日本人は何を捨ててきたのか: 思想家・鶴見俊輔の肉声 (ちくま学芸文庫 ツ 4-3)

日本人は何を捨ててきたのか: 思想家・鶴見俊輔の肉声 (ちくま学芸文庫 ツ 4-3)

作家
鶴見俊輔
関川夏央
出版社
筑摩書房
発売日
2015-10-07
ISBN
9784480096999
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日本人は何を捨ててきたのか: 思想家・鶴見俊輔の肉声 (ちくま学芸文庫 ツ 4-3) / 感想・レビュー

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おさむ

関川夏央による鶴見氏への聞き語り。1997年と2002年の2回にわたる鼎談を読むと、鶴見氏の博覧強記ぶりに圧される。その数奇ともいえる生涯は小熊英二らのインタビューや黒川創の評伝で知ってはいたが、やはりすごい。その言葉の重みや次々に出てくる含蓄につながっており、ある意味司馬遼太郎さんに通ずるものがある。自らを「悪人」と称し、エリートや「1番病」を嫌悪し続けた。ネガティブケイパビリティ、思想よりも語り口、いい人ほど頼りにならない‥‥。その箴言は20年近くたっても古びず、未来の日本を予言していたと感じる。

2021/03/11

chanvesa

指揮者のクレンペラーが同業者のワルターはモラリストだが、わたしは断じて違うと言ったというが、その話と、この本で繰り返される「わたしは悪人だった」というある種の自慢は何が違うんだろう。鶴見俊輔さんはすごい人だと思う。学生の頃、この対談のもとになるテレビを見て「樽」理論になるほどと思った。しかし、これから希望ありかもと言う明るい展望はハズれ、この壊れた社会。コンビニ・コミュニケーションなんてものはなく、おでんをいじくり回すヤツが出てくるぐらい。しかも「一番病」を揶揄するわりには誰々が一高を一番で卒業して等と

2017/02/02

踊る猫

鶴見俊輔はヌエのような人だ。あるいはそれこそタヌキなのかもしれない。無矛盾の、完成した体系を作らずむしろホットにその時々の状況と対峙し言葉を発していく。その反射神経と感受性の鋭さが、70歳をすぎてなお『寄生獣』に反応してしまう態度に帰結するのだろう。関川夏央のノスタルジックな態度と鶴見の今を見つめる態度は好対照とも思われ、それが微妙に軋みつつも独自のハーモニーを奏でた楽しい対談となっているように映る。個人的に刺激を受けたのは「受け身」の態度を採る賢さについてだ。自らの意見を変えることを恐れず柔軟に考え抜く

2022/02/07

壱萬弐仟縁

何となくTVで拝見した感じがするやりとり。鶴見氏:樽を維持したのはアメリカが戦後の日本の占領の費用を安上がりにするのに便利だったからです。文部省も、東大も残った(030頁)。あと、国旗のデザインや国家の歌詞もメロディもそのまま変えなかった自民党。いい大学からいい会社へという幻想(066頁~)。鶴見氏:ネガティブ・ケイパビリティは人の影響を受けて、自分を変えていく能力。これを尊重することが日本の文化の重大なものを保つ所以だと思う(090頁)。

2015/12/10

おおた

井伏鱒二に続く対談を読むモード第2弾。不勉強で初めてお二人の言葉に触れるのだけれど、いわゆる左側から見た戦後史について語られる。しかし単に思想の偏りだけではなく、「一番を取りたがる人は信用できない」「負けや失敗を忘れずに次に活かす消極的能力」など(別に日本人特有とは思わないけど)の人間観もおもしろい。主に鶴見の語りに関川が合わせ、二人とも歴史をきちんと消化して細かい事件もよく覚えている。捨ててきたなら拾えばいい、本書で語られる負けや失敗は21世紀にどう活かされればいいのか考えるための良書。

2018/06/26

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