ラピスラズリ (ちくま文庫 や 43-1)
ラピスラズリ (ちくま文庫 や 43-1) / 感想・レビュー
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
深夜営業の画廊に掛けられた三枚の版画から始まる長い長い冬のお話。それは冬のあいだ眠り続ける宿命をもつ「冬眠者」の一族、特別な冬寝室。幾何学の美しい温室、様々な決めごと。竈に焚べる火の美しい色、おそろしい疫病と混乱。憧憬の思いで見つめられた彼らは没落したのか、少年は同じ年を重ねられない身の上を嘆く。 話は何処に帰結するのか、彼らは何処へ行ってしまったのか、答えは与えられず文章は難解。読むのにとっても苦戦したし、結局訳分かんなかったけどなんか好き。今度は凍えるくらい寒い日にゆっくりと再読したい。
2019/04/13
ヴェネツィア
本屋さんで偶然に見つけて、タイトルに魅かれて購入。 この作家独自の空間もそうだが、何よりも時間感覚が難解。小説全体の構造把握もまた難渋。初めて読んだ作品だが、よほどじっくりと向きあわないと作品世界には入っていくのは困難。
2012/02/05
新地学@児童書病発動中
冒頭の深夜の画廊を描く部分からあっという間に物語の中に引き込まれる。主人公はそこで謎めいた版画に遭遇し、読者はその版画の中の世界にいつの間にか入っていくのだ。そこは「冬眠者」たちが暮らす大きな館で、秋の終わりの寂しげな雰囲気が漂っている。シュールレアリスムの絵を文章化したような物語で、プロットは掴みにくい。それでも硬質な文章で紡がれる確かな手触りを持った世界が魅力的で、ページを捲ってしまった。それまでの重苦しい雰囲気が解消される最後の物語が感動的で、ラピスラズリの深い青に心と体が染まるような気がした。
2016/07/10
ダリヤ
なつがくればふゆがこいしく、ふゆがくればなつがこいしい。とうみんするものたちは、つめたくすんだまっしろなきびしいふゆをしるひつようがない。それはしあわせなのか、うらやましいことなのか、よみおわったあともわたしにはわからなかった。ふゆをねむるあいだ、かれらがすごすはずだったであろうじかんをしずかにみつめるにんぎょうたち。えいえんにくりかえされることをゆるされないせかい。こわいのにうつくしく、めをそらすことができなかった。ふゆのあいだにいきをひきとったトビアスのすがたが、みたこともないのにはなれない。
2015/01/31
コットン
ストーリーを論理で読むのではなく感性で観る(時空間が異なる印象的な瞬間の絵画をちりばめたような)連作短編小説。例えば『閑日』の一場面は:冬眠者の娘が冬に起き(そのままでは死を意味するのだが)ゴーストを従え廊下を歩いていたがゴーストは下の部屋に引っぱられるように滑り落ちると、娘は闇の沼のような床に立っていることが恐ろしく、気づくと窓敷居に這い上がってひざを抱いていた。←私は自然と情景が浮かび上がってきました!
2013/03/09
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