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さようなら、オレンジ (ちくま文庫 い 87-1)

さようなら、オレンジ (ちくま文庫 い 87-1)

さようなら、オレンジ (ちくま文庫 い 87-1)

作家
岩城けい
出版社
筑摩書房
発売日
2015-09-09
ISBN
9784480432995
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さようなら、オレンジ (ちくま文庫 い 87-1) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

タイトルからは10代か、あるいは20代前半くらいの女性を主人公とした軽やかな恋愛小説を想定していた。ところが実際には、女性として生きる上での重層した生を問われるものであった。異文化の中でマイノリティとして、しかも女性であるということは二重の意味でのマイノリティ性を背負うことになる。異郷の地で生きるサリマ、ハリガネ、パオラのそれぞれの「言葉」との闘いは生そのものと切り結び、痛切であるがゆえに、小説として昇華しえたのだと思われる。作家の中から出てきた、切れば血のでるような小説だ。

2019/09/08

Shinji

稚拙と言えばそうなのかもしれないが、サリマの作文が圧巻。記憶に焼き付いた日常を語っただけであろう、このたどたどしい言葉たちがこれだけ胸を打つとは思いもよらなかったです。異国でのマイノリティーが大変なのは知識としてあっても名前での差別、言葉での差別がまかり通っている事に言いようのない思いが募ります。 サリマの様に生きていく術としてセカンド・ランゲージもそうだが、自身のキャリアとして習得するセカンド・ランゲージも新たに命を授かるようなセカンド・チャンスですね。駅での別れの場面... 良かったです♪

2016/08/04

あすなろ

さよなら、おひさま。おひさまは、オレンジ色の夢の象徴。さよならの時は、夢と共に朱色に変わる。難民・移民をテーマにした珍しい作品。加えて、移民が難民を描く構成。そこでは、我々凡人・平和ボケ・我が国しか知らぬ自分への自問自答が背後に常にある。オレンジが朱色に変わった時、それは自分を生かしておく火となり、消えることない希望となる。うーむ。芥川賞にノミネートされただけの価値ある重厚な作品だと思い、感慨に浸っている。

2016/02/03

サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥

生まれ故郷を追われたアフリカ難民の「サリマ」、自分の夢を諦め日本からきた「ハリネズミ」、イタリア移民の「オリーブ」。共にそれぞれの理由で住み慣れた故郷を離れ、文化の違う異国で暮らす三人の女性達。「言語」ということが一つのテーマかな?良い話だと思うのですが、何故語り手が変わるとそれぞれの名前が違うのか?その辺は読み進むにつれてストンと納得するのですが、そんなことが気になりストーリーに入り込めませんでした。おバカな私には、シンプルな方が楽しめたな。技巧を凝らして逆に面白さがそがれた感覚。ちょっと残念。★★★

2015/09/11

りゅう☆

難民移住者サリマはスーパーで働き苦手な英語の学校に通う。そこでハリネズミと名付けた級友らと出会う。一方、夫の仕事で海外に住む日本人女性Sが恩師宛に書いた手紙が語られる。翻訳っぽいなと感じつつ、二つの話が繋がり意外な構成に驚き。夫の失踪や再来で苦しんだり、苦手な英語で書いた作文は稚拙だがグッときたり、下の子の変化に嬉しかったり、Sは喪失の悲しみから妊娠に戸惑ったりと人生が濃縮。「意識はその人自身によってしか変えられない」という言葉が深い。だからこそ充実感と幸福を味わえる。サリマと監督のその後が気になるな~。

2017/09/29

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