変半身 (ちくま文庫)
変半身 (ちくま文庫) / 感想・レビュー
サンタマリア
これは完璧にSF小説。ScienceでもFictionでもないSF小説。不条理とはちょっと違うかな。村田沙耶香節全開で、つまり僕たちの共通的な思想を揺さぶってくる。
2022/01/14
まさ
村田沙耶香さんの作品はいつも心をエグっていく。読むとかなりダメージを受けるのだけど、また手にしてしまう。何を信じて生きていくのか。根本的な部分であり、その上に時間が流れているのに、問われると、顧みると言葉にならない。しかし、突いてくる。問うてくる。疲れて、考えて、また疲れて。ポーポーポーポーポー…。
2022/05/05
JKD
千久世島で行われる秘祭「モドリ」のシーンがあまりに衝撃で読む手が一瞬止まる。謎のポーポー祭りにまつわる奇想天外な話。続く満潮は夫婦それぞれが自分で潮を噴かせたいと、くそ真面目に切望する話。どちらもカオス。どういう発想したらこうなるのか。読み終わって解説を読むと何となく納得させられるのもまた不思議。恐るべし村田ワールド。
2022/04/23
hukkey (ゆっけ)
表題作を含む2編。村田さんワールドに付いていくのは大変なのに癖になる。<変半身(かわりみ)>孤島に残る古い風習から始まる奇妙な話。読後はそんなバカな!? って感じたものの SNS でデマが拡散される世の中を考えれば、島ぐるみ星ぐるみでバカげた真実に伝統が上書きされる可能性もあり得るかも。<満潮>「潮を噴いてみようと思うんだ」真面目に切り出されて思わず笑っちゃったけど、人それぞれ体質や性の考え方も違うのに一様に断じて、時に嗤いモノにする世間に一石を投じる話に、なるほど唸らされた。価値観が合う出会いも奇跡だ。
2021/11/30
ちぇけら
愛し愛されたくて焦がれるのも、人の命は尊いというのも、宗教だと言われればたしかにそうで、ぼくたちは盲目にそれらを信じてきたのかもしれない。生まれたときから大人たちはそう言っていたし、ぼくもそう思ってきた。だけどそれは〈本当〉なのか?そう問われると根拠の希薄さに閉口してしまう。帰納法的に証明してきた愛や命の尊さへの自信が揺らいでくずれる。信じたいものを信じている無数のニンゲンたちの群れ。〈本当〉はもっとなにもない空洞のようなものなのかもしれない。ぼくはニンゲンですらないのかもしれない。ポーポーポーポーポー!
2022/04/30
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