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帰郷

帰郷

帰郷

作家
辻内智貴
出版社
筑摩書房
発売日
2006-01-26
ISBN
9784480803924
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帰郷 / 感想・レビュー

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chimako

強くたくましい人々の世界ではなく、誰にも知られず、ささやか毎日を淡々と生きるありふれた人たち。弱いところが有って当たり前。辛いことも有って当たり前。けれど、そこには小さな喜びも幸せも存在する。例えばそれは幼い日の思い出であったり、仰ぎ見た青空であったり、ものを表現し生み出す作業であったりする。標題作の『帰郷』がとりわけ良かった。晩年の夫が語る幻に帰郷した妻と共に佇み涙せずにはいられなかった。坂本真典氏のモノクロ写真はくっきりと幻を写し取ったようだ。その幻は物語の芯。ハッとする。

2015/12/25

ひ  ほ

亡くなった夫が、繰り返し話していた故郷の町。遺された妻は、夫が世話になった「その人」に会って、一言お礼を言おうと旅立った。彼女がそこで見たものは…。思わず亡くなった夫を抱きしめてあげたくなりました。

2019/03/08

miyumiyu

辻内さんの作品は、どれも一環したメッセージを感じる。「帰郷」と「花」は、人によって傷ついても、結局人に救われる。人間ていいな、愛せるんだと思える。「愚者一燈」は、生きるとは?幸せとは?を、辻内さん独自の優しい文章で鋭く問いかけている。読後感は、抜けるような青空のように爽やかでちょっぴり切ない。

2013/07/22

zanta

192/7/8/2015 美しい写真。カラーで観たい気持ちと、モノクロだからこそ、心を鷲掴みにされたかのような懐かしさを感じていいのかと思う気持ちと。物語は、動きも少ない、短い中に、こんなに豊かな感情ー物語があって、脱帽。特に表題作がいい。

2015/07/08

MOKIZAN

帰る郷を持たぬ者として、この時期読み返したくなった。たとえ伸びやか、朗らかに過ごせぬ場所であっても、その地の陽ざしやそよぐ風は少年と語らい、包んでくれていたのだろうか。彼の心の中に、彼だけの知る郷のかたちが作り上げられ、自身への糧としていたのだろうか。他人目には変わらぬ郷も、彼の知るかたちからは冷たく、寂しく変わり、妻の瞳にもその残影が映し出されることはなかった。帰らぬままで幸せだったのか。このクソ暑いさ中、いっとき暑さを忘れ、そよぐ風さえ涼しく感じる、静かさを見つけた。セミさんさえ鳴いてなければ...

2016/08/12

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