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百年と一日 (単行本)

百年と一日 (単行本)

百年と一日 (単行本)

作家
柴崎友香
出版社
筑摩書房
発売日
2020-07-14
ISBN
9784480815569
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「百年と一日 (単行本)」のおすすめレビュー

遠くの見知らぬ誰かの生が、ふいに自分の生になる。33のあらすじ付き掌編に宿るドラマとは?

『百年と一日』(柴崎友香/筑摩書房)

 舞台俳優4名による「さんぴん」という演劇ユニットがある。市井の人にインタビューして、そこで拾った「人生の断片」を、ひとり芝居や落語や講談やダンス、ラップなどで表現するユニットだ。劇団ロロの三浦直之が監修をつとめ、北海道や沖縄で集めたエピソードを東京などで上演などしている。本書を読み、そのさんぴんのコンセプトを連想した。

 柴崎友香『百年と一日』(筑摩書房)は33話の掌編から成る。掌編といっても、短いものは2ページ、長いものでも10ページ程度。しかも本編の前にあらすじが記されており、なにが起きるか分かった状態で読み始めることになる。

 進学、就職、結婚などのハイライトは仔細に描写されているし、登場人物が有名ギタリストになったり、交通事故に巻き込まれたり、宇宙ロケットに乗ったりというくだりもあるのだが、それ以外はとりとめのない話が続く。

 特に目に留まったのは、気まぐれで転居を決める男性の話。彼は遠い街に引っ越した友人を訪ねた帰り、なんとなくという理由で、来た時とは違う路線に乗る。直感が働いたのだろうか、彼は聴いたこと…

2020/8/30

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百年と一日 (単行本) / 感想・レビュー

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starbro

柴崎 友香、3作目は、著者作家生活20周年の超短編集でした。こんなに題名が長い作品集は初めてです。オススメは「アパート一階の住人は暮らし始めて二年経って毎日同じ時間に路地を通る猫に気がつき、行く先を追ってみると、猫が入っていった空き家は、住人が・・・」&「兄弟は仲がいいと言われて育ち、兄は勉強をするために街を出て、弟はギターを弾き始めて有名になり、兄は居酒屋のテレビで弟を見た」です。 https://www.chikumashobo.co.jp/special/hyakunen_to_ichinichi/

2020/11/15

ひこうき雲

ただ『淡淡』と時が進む。百年と1日のあいだ、特別なことは何も起きない。でも確かに生きている、そこに存在する。「人生ってそんなものだよね」と思う。

2020/10/25

モルク

180ページ余りの中にある33の物語。独特の世界観の中にどっぷりつかる。様々な地方、いろいろな人に流れる時間、懐かしさ、不思議さに満たされた時を過ごした。思い出の地を再び訪れた時、建築物は変わり自らの記憶と照らし合わせながら懐かしさそしてちょっぴり失望を味わう。全て移り変わるものであり、自然、土地、建物そして人間も例外ではない。著者の描く世界に足を踏み入れるとその心地よさに浸ってしまう。

2022/11/16

buchipanda3

掌篇集。こんな人の営みがあった、という風に様々な人たちの記憶が語られる。ある瞬間の情景が五感をくすぐるようにパッと浮かび上がったかと思えば、あっという間に10年、20年と時が流されていく。その振れ幅の大胆さに酔いしれた。よく考えてみれば自分もそういった一瞬の積み重ねとふつうに過ぎ去った長い年月で出来ているのだなと。そしてその間に変化しないものはほとんど無かったことに改めて気付く。もちろんそのままというのもある。そう思ったら何だか頭が柔らかくなったような。郷愁と無常が入り混じった不思議な読み心地を堪能した。

2021/03/09

なゆ

こういう本、好き。“この星のどこかにあった、誰も知らない33の物語”とあるように、何処の誰ともわからない人たちの生活や人生のかけらが散りばめられている。異国らしき話もあれば、誰かと共有したささやかな記憶の行方だとか。短い話のなかで時間も場所もひょいひょい飛び越えて、変わるものあれば変わらないものもあって。定点観察みたいな話が好き。町のラーメン屋、猫の通り道、古びた喫茶店、etc…。感情は最小限に淡々としているけれど、それぞれの話に思うところは残りそれが降り積もって、本を閉じるころには芳醇な読後感に〜♪

2020/08/19

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