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一九三四年冬―乱歩 (創元推理文庫)

一九三四年冬―乱歩 (創元推理文庫)

一九三四年冬―乱歩 (創元推理文庫)

作家
久世光彦
出版社
東京創元社
発売日
2013-01-20
ISBN
9784488427115
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一九三四年冬―乱歩 (創元推理文庫) / 感想・レビュー

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がらくたどん

小説が書けない40のオッサンになったあの年の冬、彼は都内の小さなホテルに逃げた。いつもの執筆疲れのプチ家出とは違う連載放棄のガチ家出。先日その乱歩をトンヅラさせた連載『悪霊』を乱歩に代わって完結させようという鎮魂の書(私にはそう見える)が出版され思い出したのが本書。ミステリマニアの女性客と中国人美少年従業員にしか接触せずに過ごすホテルでひとり乱歩は「書けていた自分」に魘されながら一つの物語を産む。禿頭と下半身の白髪に消沈しつつ半裸で文字を綴る男の滑稽な鬼気と彼が産む「梔子姫」なる物語の哀しい夢幻に目が眩む

2024/03/19

藤月はな(灯れ松明の火)

雨の夜道を歩いていたら濡れそぼつ梔子の匂いが強く、感じられたので無性に読みたくなり、再読。作中作の「梔子姫」のタッチは乱歩の艶めかしい怪奇性と谷崎の豪奢性のあるフェチズム、横溝の静謐な耽美性を合わせた上でお上品にした感じという印象かな。陰毛に白髪ができて落ちこんだり、地震に震えたり、仁丹をかみ砕きながら全裸で汗だくになって執筆する乱歩先生が中々、滑稽な人間味があり、可愛らしい^^また、バーナビー・ロスの『Yの悲劇』とエラリー・クイーンの作風についての言及にはミステリーファンにはニヤリとさせられます。

2015/07/07

HANA

1934年、冬。小説が書けなくなった乱歩はホテルに身を隠すのだが…。小説が現実を侵犯する怪異譚と思っていたのだが、実際は美貌の中国人ボーイや探偵小説好きの米国人人妻に振り回される乱歩、鬱々と空想に遊ぶ乱歩がユーモラスな筆で描かれていた。当時の探偵小説、ドルリー・レーンとクィーンだとか新青年の諸作家、ポオの詩も乱歩の空想という形で挟み込まれているため、この時代の作家に興味がある自分としてはそれだけで大満足。特筆すべきは作中作の「梔子姫」で、初期の乱歩を思わせる残酷なエロスがあの独特の文体で描かれている。

2013/03/08

きょちょ

山本周五郎賞受賞作。 乱歩論でもある。 作者は相当乱歩を研究したのだろう。 物語は、1934年の冬、乱歩が家出をして「張ホテル」に滞在する話(実際の乱歩もこのホテルに同時期に滞在していたらしい)と、作中作「梔子姫」の話の二つ。 乱歩の話、面白く読めた。 乱歩の魅力が描かれているというより、逆に人間臭い乱歩が描かれている。 ただ、201号室の謎や洗濯屋はどうなったのか、ちょっと消化不良。 「梔子姫」も怪しげな作品で、まるで実際の乱歩が書いた作品に思えるほどだが、結末は期待外れだった。 ★★★ 

2018/05/15

再読でもとても面白かったです。滑稽で可愛い乱歩にほのぼのし、作中作の「梔子姫」にうっとりしました。今回は、所々に入るミステリ小説が気になって、青空文庫でいくつもダウンロードしました。こちらも読むのが楽しみです。

2015/11/20

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