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叫びと祈り (創元推理文庫)

叫びと祈り (創元推理文庫)

叫びと祈り (創元推理文庫)

作家
梓崎優
出版社
東京創元社
発売日
2013-11-29
ISBN
9784488432119
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叫びと祈り (創元推理文庫) / 感想・レビュー

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Tetchy

全ての短編が海外を舞台にしており、その国の、その土地の風習や文化で醸成された日本人の価値観から離れた尺度での考え方に立脚した論理で構成されている。2016年の今、たまたま海外に住んでいる私にとってここに書かれている独特の論理や倫理観は全く特別なことではない。最後まで読むとなぜタイトルが『祈りと叫び』なのかが解る。世界を巡る斉木は世界の残酷さとそこで生きるために残酷な道を選ぶ人々に対して叫び、しかしそれでも世界は美しいと信じたいがために祈りを捧げる。明日を信じてまた斉木はまだ見ぬ世界へと旅立つのだろう。

2016/10/31

おかむー

様々なジャンルのミステリがあふれる昨今のなかでも、国や地域の価値観や倫理が軸になるというのは珍しいのかな。『よくできました』。サハラ砂漠をゆくキャラバン、スペインの風車の丘、ロシアの修道院、アマゾンの未開の集落、そして何処とも知れぬ閉ざされた部屋。エキゾチックな情景描写のなかで主人公・斉木が遭遇する殺人や消失は、仕掛けとしてのミステリというよりは舞台となる地域ならではの価値観に基づく動機こそが肝となる。五篇めの『祈り』でそれまでの四篇とはかなり毛色が違ってくるところは良し悪し微妙なところかな。

2017/05/05

yu

異なる国に生きる人々の価値観の違い。 海外の動向を分析する雑誌を担当している斉木が、取材のために各国を訪れる。そこで遭遇した出来事が各物語の筋となっている。 スペインの白い街が舞台の「白い巨人」は、悲しいかな北海道民、水曜どうでしょうがチラついてしまい、どうもすんなりお話が入ってこなかった。 ただ、梓崎優という作家が生み出す文章は至極魅力的。表現の一つ一つが、あまり目にしたことないものばかりで惹きつけられた。『叫びと祈り』このタイトルがまた素晴らしい。

2014/01/26

オリックスバファローズ

サハラ砂漠、スペイン、ロシアの修道院、アマゾンのジャングル、そして最終話では、それまでの四編を含むこの作品の全体像が鮮やかに見えてきて、謎解きとは違う驚きに心躍らされることとなった。また、日本人の斉木が探偵役となることによって、「異国」ならではの特異性が鮮烈に浮かび上がっていた。

2018/07/12

kana

《風が走る音は、誰かの悲痛な泣き声に似ている。「砂漠の船」が、呼びかけに応えるように一声いなないた。》美しく繊細な情景描写に1行目から痺れるような魅力を感じる。砂漠や霧で閉ざされた教会や熱帯雨林の人々の生活を取材する斉木が、その旅先で出会う謎を解くというスタイルをベースにしたミステリーです。叙述トリックと理解不能な異国の価値観に心地よく惑わされる。いわゆるトリッキーな推理小説ではなく、計り知れない人の心の闇に静かに迫っていくテイストがとても好みで、『叫び』からの『祈り』の展開にはただただ圧倒されるばかり。

2014/05/24

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