ポール・ボウルズ作品集 4
ポール・ボウルズ作品集 4 / 感想・レビュー
らぱん
500頁の大作は魅力的な少年アマールの成長譚と言えるが、舞台が仏領フェズの独立前夜であり、彼の冒険は動乱が係わり政治色を帯びて、哲学的な迷路じみた物語になっている。予言者の末裔の家で生まれ、シェリフ(≒貴種)の天分を持った彼には本質を視る眼があり、少年の純粋さで事物を計り、教義に照らし合わせ判断する。二人の米国人が物語に絡み、その単純化した記号はムスリム、独善的進歩主義者、傍観者であり、苦悩を抱えるのは作家である傍観者だ。アマールは理解の及ばないものに戸惑いながらも、迷いは無く彼の道を進んでいく。↓
2019/08/02
saeta
95年の初版本を購入して以来だから25年振りに家本を読んでみました。モロッコがフランスから独立する間際の古都フェズを描いた約500頁の長編。各章の配分がちょうど良い塩梅で連続ドラマを観ているような感じで大変読みやすかった。フェズのホテル住まいのアメリカ人の作家とモロッコの少年の邂逅を軸にキリスト教とイスラム教の比較をはじめ、互いに相容れない文化や宗教、世代の違いなど、まるでこの迷宮都市さながら混沌としているのも魅力だ。ボウルズ面白いのだが、事のほか読まれている人が少ないのが残念である。
2021/05/30
doradorapoteti
ポール・ボウルズの最高傑作のような気がする。
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