おわりの雪 (白水Uブックス)
おわりの雪 (白水Uブックス) / 感想・レビュー
やいっち
「山間の町で、病床の父と、夜こっそり家を留守にする母と暮らす〈ぼく〉は、ある日、古道具屋の鳥籠のトビに心を奪われる。季節のうつろいのなかで描かれる、生と死をめぐる美しい寓話」というもの。本作品の何よりの売りは、作者マンガレリの織り成す作風自体にある。
2023/07/10
南雲吾朗
病床の父は息子を温かく見守り、息子は病床の父を熱心に気遣う。生活を支えつつ、それを包み込むように見守る母親。家族の愛が感じられる。ただ、人間の都合によりまるでごみを捨てるように生き物たちが捨てられる。自分がトビを飼いたいために、生き物を殺してお金を稼ぐ。生活環境等を考えたら仕方がないことなのかもしれないが…。動物が死ぬのを読むのは本当につらい。
2020/02/12
キムチ27
情景はヨーロッパの何処のイメージ。登場する父子。父は死期が迫っている感、少年は逞しいイメージではなく、働いている養老院の匂いもあり、影を背負っている。筆者作品はお初。童話でも寓話でもなく、ひっそりと淡い色彩が続く。鳶と父と母・・僕が父さんと鳶の一体化を望んでいる理由がよく解らないままラストへ。ひっっ者の作風だろう、こんな手法。確としたメッセが無くても沈黙が何かを伝えている。巻末に有るように音楽で言うならフェルマータ。筆者自身が好むモチーフは「父と子」水滴のポタリポタリ、粉雪が降り積もる・・そんな点景
2019/11/08
マリカ
「トビを飼いたいと思ったのは、雪がたくさんふった年のことだ。そう、ぼくは、その鳥がどうしてもほしかった。」何度読んでもいいなと思う。多くは語られていないがゆえに、少年の心のひだに寄り添うことができる。少年が老人と散歩した道、溺れてゆく子猫たち、父に語ったトビへの思い、老犬と歩いた雪原、自動消灯器の音、父のベッドの木枠の温度。すべては雪がたくさんふったあの年のできごと。
2016/11/04
松島
これ良いよ。 淡々と降る雪の静けさを感じさせる詩的な文章が少年から大人に成長する危うさに混ざり合って溜息。永井龍男の胡桃割りにも似たテーマと文章の無駄のなさが重なる。
2019/01/30
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