読みたい本がここにある

Facebook Twitter LINE はてブ

ミラノ霧の風景―須賀敦子コレクション (白水Uブックス―エッセイの小径)

ミラノ霧の風景―須賀敦子コレクション (白水Uブックス―エッセイの小径)

ミラノ霧の風景―須賀敦子コレクション (白水Uブックス―エッセイの小径)

作家
須賀敦子
出版社
白水社
発売日
2001-11-01
ISBN
9784560073575
amazonで購入する

ミラノ霧の風景―須賀敦子コレクション (白水Uブックス―エッセイの小径) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

アキ

霧の風景はミラノの風物詩である。若い頃のイタリアで過ごした13年間を60歳になって振り返ると、ある場面だけが特別に印象に残っていて、現実だったのか幻だったのか、本で読んだ印象だったのか、霧の中に見える影のようにぼんやりとしたまま。多くの知人は、今は消息もわからず、あるいはこの世になく、街と人の記憶を辿るが、ミラノやトスカーナやルッカの街の風景は何も変わらず佇んでいる。そして、この本に今は亡き著者の思い出だけが残される。不安だらけで濃密で満ち足りて情熱に溢れていた彼女の青春の残り火だけが。

2020/01/14

aika

ミラノに立ちこめる霧は、須賀さんの心の中をまとう霧でもあるのかな、と感じました。特に噛みしめるようにして言葉をなぞった場面は、コルシア書店の仲間だったガッティが変貌して皆に煙たがられ、老いていった最期の姿であり、そんな彼に目をそむけたくなった須賀さんの素直な心情や、夫ペッピーノを喪った言うに言われぬ悲しみの行き場です。描かれる人々は皆、本質的には孤独に思えます。しかしイタリアに息づく詩や文学を、そして須賀さんの眼差しから描かれた、霧の向こうに行ってしまった彼らの生には、たしかに感じる温もりがありました。

2019/05/04

naoっぴ

著者がイタリアで過ごした日々の追憶のエッセイ。そこで出会った人や街のこと、何気ない小さなエピソードまでを丁寧に綴っていく。美しく上品な文章、静かに語りかけてくるような文体が心地よい。イタリアというと情熱的であっけらかん(そしてちょっといいかげん(笑))というイメージがあったが、ここで語られるイタリアは歴史情緒豊かな美しい土地として描かれている。景色のいい場所でひとりゆったりと読みたい味わいのあるエッセイ。

2015/10/09

ゆうこ

須賀敦子さん、第一作目の作品。イタリアで過ごした日々、いまは霧のむこうへ行ってしまった、仲間たちとの思い出十二話が綴られています。発表順を遡り、よんできましたが本作品でおしまい。既読の作品に登場した人々を、わたしも懐かしみながらよみました。「遠い霧の匂い」「ガッティの背中」が印象的だったけれど、やはり「セルジョ・モランドの友人たち」が響きました。いちばん楽しかったとおっしゃる、ポンピアーニ出版社での、翻訳のお仕事のこと。静かな文体のなかに、高揚した気持ちが混ざっていて、わたしも嬉しい気持ちになりました。

2015/09/13

aika

過ぎ去った、それでも決してその存在が消えないものたちへ。初めて読んだ時よりも、東京で筆を執る須賀さんとミラノとの間に横たわる距離を重く感じました。最初の「遠い霧の匂い」に記される寂寥の予感が終始漂いながら、須賀さんと縁したひとりひとりの人生に息づく哀しみと、共に時間を過ごした静かな喜びとがそっと読み手の中に流れ込んできます。書店の人々と違えていく孤独なガッティ、須賀さんをイタリアへと導いてくれたマリアの壮絶な過去、夫を偲んで花束をくれたアントニオ、そして最愛のペッピーノとの日々。霧の向こうが涙で滲みます。

2020/01/19

感想・レビューをもっと見る