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追悼のしおり (世界の迷路Ⅰ)

追悼のしおり (世界の迷路Ⅰ)

追悼のしおり (世界の迷路Ⅰ)

作家
マルグリット・ユルスナール
岩崎力
出版社
白水社
発売日
2011-05-25
ISBN
9784560081358
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追悼のしおり (世界の迷路Ⅰ) / 感想・レビュー

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syaori

自伝的三部作の第一作で、母方の家系を追った本。記録や歴史、故人を偲ぶ品々から「傍系の親族」たちを呼び返す作者の筆の端然とした優美さにほれぼれします。ただその過程で痛感されるのは「個性なるもの」の儚さで、同時にその脆く「ひとつひとつが決して同じではない構造物」たちへの敬意も感じずにはいられません。そんな風に自分という結果に繋がる原因を辿る作者の目は、しかしそんな原因も結果も意味をなさない雄大な時間と空間高みにあるようで、その透徹した眼差しは何を捉えるのか。世界に”ある”ことの虚しさも喜びも感じながら次巻へ。

2020/04/17

兎乃

再読 /記憶掘り起こしのためにザックリ読みですませようと思ったのに 捕まった。『なにが?永遠が』が遠のくけれど、これは嬉しい悲鳴に違いない。岩崎氏の翻訳に ひっそりと感謝をおくりたい。

2015/09/08

rinakko

再読。素晴らしい読み応え。散文家オクターヴ・ピルメと弟レモの人生をたどる章を結ぶ言葉が忘れがたい(レモには熱烈な敬意を、オクターヴには感動と苛立ちを、しかしゼノンは…)。無名の作家と詩人の亡霊が、ユルスナールと先祖たちとの隙間を綴じ合わせる。隠蔽されたレモの自死、弟を深く愛したがその心を汲むには至らなかった兄への批判、その姿を浮き彫りにする一文一文が明晰でありつつ親愛が滲み出している大変に好きな章だ。父がいつまでも保存していた母の手紙のこと、両親の姿に愛着をおぼえる理由について触れている箇所も静かに響いた

2015/08/25

solaris

膨大な史実の蓄積を元に歴史上の人物をまさに眼前に体現させることのできる作家ユルスナール。晩年ライフワーク的作品、彼女に繋がる母方の家系の年代記。この「年代記」の情報量は膨大。私の興味は、この作家の古今東西の文化に深く通じる深い見識と創作欲の源泉だ。しかし作者もいうように、祖先の彼らとの共通点はほとんど見受けられない。とはいえ、「黒の過程」で描かれるゼノンの情景は、幼い頃伯父が好んで母に話してくれた挿話が限りなく潜在的に作家の中に宿されていることにも気づく。その源泉は一人の人物を偏見なく正確に形作ること故。

2016/03/27

rinakko

素晴らしくて、ため息がこぼれるばかり。遥かな年月の砂に半ば埋もれかけ、人々からもほとんど忘れられかけていた一族の歴史とその明暗が、一人の子孫の声によって呼び戻されて手繰られて、束の間息を吹き返す。一貫された揺るぎない思惟が底流となり、それらを物語として丹念に紡ぎあげる。透徹し、どこまでも達観した筆致の見事さに、慄きながら読み耽った。ユルスナールが自分を産んで間もなく亡くなった母親とその一族について調べ、その軌跡を綿密にたどった自伝的作品。散文家オクターヴ・ピルメと自死した弟レモを描いた章が好きだった。

2011/07/25

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