京都祇園もも吉庵のあまから帖 (PHP文芸文庫)
「京都祇園もも吉庵のあまから帖 (PHP文芸文庫)」のおすすめレビュー
京都祇園を支える「粋」な生き方に心がときほぐされる! 元芸妓の絶品“麩もちぜんざい”が味わえる、よろず相談処
『京都祇園もも吉庵のあまから帖』(志賀内泰弘/PHP研究所)
親の存在がありがたくもときに煩わしいのは、彼らにとって我が子はいつまでも子供に過ぎず、一人前として扱ってもらえないからだ。それは同時にありがたいことでもあって、世間的には成熟した大人として扱われる。本当は、子供のときと大差ない悩みや葛藤を抱えていても、誰にもこぼすことができない。そんな大人たちの駆け込み寺を描いたのが『京都祇園もも吉庵のあまから帖』(志賀内泰弘/PHP研究所)だ。
まず冒頭、語り手となるのは、京都の花街に育った元芸妓で現タクシードライバーの美都子、38歳。祇園No. 1を誇っていた彼女が畑違いの転職を決めたのは、やはり元芸妓でお茶屋の女将でもある母親・もも吉に「踊りが高慢で謙虚さがない」と指摘されたのがきっかけ。人一倍努力を重ねたのは確かだけれど、幼いころから見た目も能力も人より優れていたがゆえに、ナチュラルに驕りをそなえた彼女が、若い見習い芸妓・奈々江を通じて己をふりかえるのが第1話。
第1話を読んでいると、人はそう簡単に“大人”にはならないし、むしろ経験を積むうち…
2019/11/2
全文を読むおすすめレビューをもっと見る
京都祇園もも吉庵のあまから帖 (PHP文芸文庫) / 感想・レビュー
茜
心が軽くなる粋な人情話の短編が5話収録されています。読んでいると京都の花街が頭の中に広がります。登場人物の京都弁が心を解きほぐしてくれて良かった。仕込みさん、舞妓さん、芸妓さんのしきたりを知らなかった私には新鮮でした。「『頑張る』いうんはなぁ、『我を張る』こと。つまり自分一人の頑張り、独りよがりのことやなぁ。それに対して『気張る』いうんは『周りを気遣って張り切る』ことや」そうか、私も今日から「おきばりやす」と言ってみようと思います。
2019/11/20
カメ吉
五話からなる短編集。単なるほのぼの系なお話かと思ったけど少し違う感じでした。元芸妓さんで今は甘味処『もも吉庵』を営むもも吉母さんとその娘で同じく元芸妓さんで今は美人タクシードライバーの美都子が色んな悩める人の心を救うお話。でも甘いだけでなく辛さもある感じが良い雰囲気を醸し出してます。 最後のお話は特に響きました。要は幾つになってもまだまだ修行(業)中って事。勉強になります。
2019/09/30
machi☺︎︎゛
祇園で一見さんお断りの甘味処、もも吉庵を営む元芸妓のもも吉。人生経験が豊富のもも吉が悩みを抱えた人たちに愛に満ちた言葉をかけてくれる。決して人に媚びないし自分にも厳しいもも吉だけど本当はすごく愛情深く優しい。もも吉と近くのお寺の住職、隠源との掛け合いが夫婦漫才みたいで面白かった。花街の話だから会話はゴリゴリの京言葉だけどそれが余計に情景を思い描きやすく良かった。
2021/06/21
とし
京都祇園もも吉庵のあまから帖 1巻。祇園の一見さんお断り甘味処「もも吉庵」女将もも吉、もも吉の娘、京都の個人タクシードライバー美都子、もも吉庵の常連客満院住職隠源、もも吉庵に住みついている猫「おジャコ」が絡む短編5作。にんまりしたり、ほろっとさせられたり、ホッコリさせられたりと心温まる物語でした。
2021/04/09
シナモン
献本当選本。京都祇園にある甘味処「もも吉庵」を舞台に繰り広げられる様々な人生模様を描く。震災を乗り越え稽古に励む奈々江ちゃん、亡き妻とともに京都観光する男性、高校生の淡い恋…どれも素敵なお話だった。世の中、不条理なことや理不尽に思えることもたくさんあるけど、正しいとか正しくないことよりも大切なこともある。ふつうとは…の意味。京都の風情、人情を感じながらいろいろなことを教えられた気がした。「ええ考えが出んでも、しゃべったら心が軽くなるもんや。」素敵な一冊をありがとうございました。
2019/12/05
感想・レビューをもっと見る