アウシュヴィッツのタトゥー係
「アウシュヴィッツのタトゥー係」のおすすめレビュー
アウシュヴィッツ収容所という地獄で見出した恋と希望――実話をもとにした抵抗の物語
『アウシュヴィッツのタトゥー係』(ヘザー・モリス:著、金原瑞人・笹山裕子:訳/双葉社)
好きな仕事をみつけて成長したい。さまざまな経験を積んで、世界を見て回りたい。そしてなによりも、この人しかいないという人をみつけ、恋に落ち、ともに楽しい時間を過ごしたい……。
若者の誰もが胸に宿すささやかな望みを真っ黒に塗りつぶされ、「朝、目が覚めたなら、今日はいい日だ」と思うまでに追い詰められた人々がかつていた。ナチスによる民族浄化作戦で迫害された被害者たちだ。
第二次世界大戦、アドルフ・ヒトラーが率いるナチス政権は、彼らが思うところの「劣等民族」を次々に収容所に送り込み、殺していった。標的となったのはユダヤ人だけではない。非定住民族のロマやナチスにとっての敵国人、またヒトラーを厳しく批判した学者や言論人も含まれていた。要するに「気に入らない者」なら誰でも抹殺したのだ。
本書『アウシュヴィッツのタトゥー係』(ヘザー・モリス:著、金原瑞人・笹山裕子:訳/双葉社)の語り手であるラリは実在の人物である。1942年から1945年までの3年間、アウシュヴィッツとビルケ…
2019/10/4
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アウシュヴィッツのタトゥー係 / 感想・レビュー
アン
アウシュビィッツ、ビルケナウ強制収容所で、被収容者達の腕に識別番号を彫る役についたユダヤ人のラリ。彼は抵抗を覚えながら、救われた自分の命について考え特殊な仕事をこなし、ギタという瞳の美しい娘に出会います。ナチス支配下において実際にタトゥー係であった人物の話をもとに綴られた物語。背負った運命の辛さや恐怖、したたかに生き抜く意味、愛の尊さ…。解説にあるように彼は後世に語り継ぐための証人として、神から遣わされた人物なのかもしれません。二人が寄り添う写真や息子さんによる両親への深い感謝の思いに胸が熱くなります。
2019/10/08
どんぐり
緑のインクをひたした布切れを傷口にこすりつけながら針で番号を彫るユダヤ人。アウシュヴィツ=ビルケナウの強制収容所のタトゥー係をモデルに描いたフィクションである。ユダヤ人の貴重品を押収する「カナダ」と称する倉庫での選別、ガス室の遺体を処理する特殊労働隊、大きな石をひとつの場所から別の場所へ運ぶことをくり返しては作業に遅れた者が撃ち殺されるなど、ユダヤ人であることが罪であるかのように多くの者が死の歯車に呑み込まれていく。そのなかで、政治局直轄のタトゥー係は、親衛隊員の管轄外にある立場を利用して同胞のユダヤ人や
2020/01/18
chimako
アウシュヴィッツの話は辛い。わかってはいるが知らぬ顔で素通りするのは憚られる。これは厳しい収容所で芽生えた恋を貫いた若い二人の物語。周りの夥しい数の収容者たちとそれを監視する親衛隊、そこに出入りする地元の人々の物語でも歴史でもある。生きるために同じ被収容者に番号をタトゥする係になったラリはスロヴェキアの青年。左腕に彫られた番号は32407。人に番号をふって管理するなどあり得ない、そう思いながら来る日も来る日も番号を彫り続ける。収容所での日常は地獄だが絶対に生き延びる。その強い想いがやがて奇跡を呼ぶ。
2022/02/07
キムチ27
アウシュヴィッツ関連の本の出版は留まる事なく続いている。それは人間がした行為として、けっして目を逸らしてはならぬ事実、而も未だに解明検証が継続する歴史的行為だから。私もこの1年、意識して読み続けた。その中では比較的語りが穏やか。訳者の一人が金原氏と言うこともあり、青少年向け?とも感じられる。ラリとギタの恋愛を絡め、成就まで綴られる。モデルはあるがフィクション。タトゥーを職としたお陰で与えられた特権的立場は「アウシュヴィッツの歯科医」を思い出した。文面の下に埋もれたおぞましい史実を押し図りながら読んだ。
2019/12/19
breguet4194q
この本のお陰で、アウシュヴィッツの内側を垣間見る事ができました。自分の人生の5分後が保証されてない状況の中で、生き延びることができた奇跡的なケースかもしれません。作者はフィクションと言いつつも、タトゥー係本人に長時間のインタビューをし、史実をもとに書いてます。本当に残酷な歴史です。
2021/07/31
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