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涼子点景1964

涼子点景1964

涼子点景1964

作家
森谷明子
出版社
双葉社
発売日
2020-01-21
ISBN
9784575242430
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「涼子点景1964」のおすすめレビュー

家族を次々に失った女子高生の謎めいた過去……。美貌の奥に隠した真実とは?

『涼子点景1964』(森谷明子/双葉社)

 東京オリンピック開催まであと数ヶ月。何やら思わぬ暗雲が立ち込めつつもあるが、いざ始まればお祭り好き、スポーツ好きには最高のひと時になるだろう。だが、国民全体の熱狂度はというと、前回の東京オリンピック――1964年のそれとは比べ物にはならないようだ。『涼子点景1964』(森谷明子/双葉社)の物語は、前回の東京オリンピックが始まる寸前、興奮のるつぼと化していた新宿の片隅から始まる。

 第一章「健太」で語られるのは、商店街でのちょっとした万引き騒ぎだ。事件と呼ぶのもはばかられるほどの小さな出来事だが、思わぬ濡れ衣を着せられた小学生の健太にとっては、オリンピック気分も吹っ飛ぶ一大事だった。

 そんな健太に救いの手を差し伸べてくれたのは、美人だけど愛想のない女子高生・小野田涼子。彼女は、年に似合わぬ冷静な状況分析力を発揮し、あっという間に事態を収拾してしまう。

 第二章「幸一」では、そんな涼子に興味を持った健太の兄・幸一が、ほんの好奇心から謎めいた彼女の素性を調べ始め、その身の上が妙に怪しいことに気づく。

 涼子は、幸一の…

2020/2/29

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涼子点景1964 / 感想・レビュー

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いつでも母さん

「もはや戦後ではない」と言ったのは誰?戦後の復興の証のような『東京オリンピック』・・あの頃の喧騒の中、本作のような事があったとしても不思議ではないと思える今は2020年。震災復興オリンピックを謳って世の中はコロナウイルスに右往左往している。いつかまたそんな小説が産まれるのかも・・さて、涼子を知る人々の言葉が涼子を、事件を、時代を語る。そうさ、今となっては涼子の推測でしかないが多分真実なのだろう。過ぎた年月は還らない。抱えて生きて行け。森谷明子さん初読み。面白かった。

2020/03/23

ちょろこ

読後感が良かった、一冊。1964年のオリンピック決定に沸く東京。その地で 一人の少女 涼子の父が姿を消した。父の失踪に絡む秘密、母の言葉、自分なりの確信を胸に秘めながら生き抜く決意をした涼子。ミステリアスな雰囲気、過去を纏う涼子という人物像が様々な視点から浮かびあがる過程は気がつけば惹き込まれるほどに。終盤一気にヴェールがとれたかのような姿は自分にとっては意外性と共にキラキラ輝く姿に…。そして同時に心に拡がる穏やかさとほんのり温かい読後感。良かった。小さな謎解きも楽しめる作品。

2020/03/19

たっくん

1964年、東京オリンピックの年・・霞ヶ丘団地の近く、商店街曽根薬局の次男坊健太は、常盤書店で万引きの疑いをかけられるが、涼子お姉さんの証言と機転に助けられる。大京中学校に入学するが卒業を待たずに転出した、住んでいる場所も今はどうしているかわからない謎の少女、成績は優勝だが給食費も払えない貧しい家庭育ち、しかい最近「お嬢様」と呼ばれ高級車に乗っていた涼子。遼子が住んでいた長屋、取り壊された跡地から発見された黒焦げの遺体そして失踪した父親、深まる謎。健太の兄幸一は涼子の生い立ちを追う。ミステリアスで面白い。

2020/07/07

fwhd8325

あのオリンピックから56年も経っていることをあらためて実感します。まさか、再び東京で開催され、まして、それを見ることができることになろうとは考えてもいませんでした。物語は主人公涼子を軸にした人間ドラマですが、随所にあの頃の熱気を感じさせてくれます。一気に時代に戻ったようなリアリティを感じます。

2020/08/30

モルク

1964年の東京オリンピックの開催に沸く日本。高度成長期に向かい、恥部を壊しあるいは隠す。国立競技場近くの土地買収と商店街、そんな中で涼子のドラマが始まる。「もはや戦後ではない」時代に、貧困生活を送るミステリアスな美少女涼子が、各章で各人に語られることによってその像が赤裸々となる。ミステリーを解くがごとく、次々と難題を解決に導きもし、貧しい生活を送っていたにも関わらず、いつも毅然とした態度で不思議と上流階級の人や生活にも溶け込めるなど謎が多い涼子。その混沌とした時代と共に語られる涼子に興味津々。

2020/06/21

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