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共謀小説家

共謀小説家

共謀小説家

作家
蛭田亜紗子
出版社
双葉社
発売日
2021-03-17
ISBN
9784575243826
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「共謀小説家」のおすすめレビュー

身ごもった命を別の男の子として育てる…“共謀”から始まった夫婦の絆は「書くこと」。明治期の文壇を舞台に、手の届かないものを追い続けた2人の物語

『共謀小説家』(蛭田亜紗子/双葉社)

 明治期の文壇は、男性中心社会だった。文芸同人誌を立ち上げるのは男性、そこに集まるのも男性。樋口一葉のような女流作家が現れることはあっても、成功例はごくわずかにすぎない。当時の女性は、家庭に入るのが当たり前。女性が小説を発表する場さえなかなか得られず、ましてや職業作家になるなど大それた夢だったろう。だが、そんな時代にあっても、「書きたい」という熱をたぎらせていた女性はいたはずだ。『共謀小説家』(蛭田亜紗子/双葉社)の主人公・宮島冬子も、そのひとり。「自由に伸びやかに文字を綴ってみたい」という切なる願いを抱いた少女は、数奇な運命に振り回されることになる。

 当代きっての人気作家・尾形柳後雄(ゆうごお)にあこがれる17歳の冬子は、尾形の家で女中として働くことに。本来なら弟子入りして彼に学びたいところだったが、尾形は女の弟子を取らない。内弟子たちの輪に混ざりたいという羨望、20歳で婿を取るまでになんとか作家として世に出たいという焦燥を抱きつつ、雑用に追われる日々を送っていた。

 それから半年後、尾形のもとに新たな内弟子・…

2021/4/6

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共謀小説家 / 感想・レビュー

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いつでも母さん

『私たちは互いに利用しあって生きている』真の意味は終章に入って明らかになった。ほぅ…終始どこか違和感があったのはこういう事だったのかぁ。やっとスッキリした感じ。欲して叶わぬ春明の秘めた愛。ならば冬子の愛は何処に?書くことに憑かれた冬子の生涯がいっそ見事。互いの中に棲む鬼を飼いつつ過ごした歳月はやはり愛より情だと思った。

2021/04/15

ゆのん

17歳で作家を夢みて東京の作家の元で女中として暮らす冬子。女であるばかりに弟子になる事さえ出来ない時代。妻となり母となるが決して幸せとは程遠い人生となる。涙しそれでも歯を食いしばり健気に生きる女性というだけではない。自身の内に住まう鬼が冬子を強くし大胆にし生かしている様に感じる。夫婦の関係性も興味深い。冬子の望む夫婦、家族の姿がすれ違ってゆく様は何とも哀しいものがあるが、鬼を飼っているままでは掴めない、掴むことの出来ない泡沫の光なのではないか。冬子が人生を全うした最期の時に何を思うのかと考えてしまう。

2021/03/04

kei302

〈舞台は明治の文壇 いまに通じる不自由さのある時代に 手の届かないものを求めてあがいた夫婦のいびつな絆の物語です〉とても面白かった。明治時代の作家先生の話か…。と、冒頭での苦手意識はあっという間になくなり、するする読んだ。冬子が酷い目に遭い、え―、こんな許せん💢と腹が立つし、春明の行動が謎だし、最後の方は衝撃も衝撃、さすが「共謀」小説家夫婦、お見事です。「私たちは互いに利用しあって生きている」実在の小説家夫妻を題材にした、衝撃的な愛の物語。

2021/03/24

竹園和明

明治を時代背景にした本作。登場する人々の会話や暮らしぶり等、明治時代のレトロ感が逆に新鮮。大御所作家に弟子として師事していた春明と女中で作家志望の冬子。なかなか芽が出ない春明が冬子に持ちかけた“共謀”の正体とは…。夫婦となった2人の、作品を生み出すためのそれぞれの苦悩が巧みに描かれる。その果てに勝者となるのは共謀を仕掛けた春明か全てを受け容れた冬子か。水が流れるようなサラサラした質感の割に、しっかりした中身となっているという不思議な作品でもあった。「意外に」と言っては失礼だが、予想以上に面白い作品だった。

2022/05/01

明治から大正にかけて、女性が自分の持つ才能と可能性を開花させようともがきながらも踏み躙られ利用され、停滞しながらもその時々の出来る最善を尽くしながら生き抜く物語。当時の時代において、女が小説家になろうなど無謀にも等しい苦行に諦めずに力をためていく冬子と彼女を取り巻く男性小説家達。物書を生業とする人間たちの業に圧倒される物語だった。

2022/05/17

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