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つまらない住宅地のすべての家

つまらない住宅地のすべての家

つまらない住宅地のすべての家

作家
津村記久子
出版社
双葉社
発売日
2021-03-17
ISBN
9784575243857
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「つまらない住宅地のすべての家」のおすすめレビュー

井ノ原快彦主演でドラマ放送中! 女性受刑者が刑務所から脱走!? 交代で見張りを続けた住民同士の関係にも変化が! サスペンスありの群像劇

『つまらない住宅地のすべての家』(津村記久子/双葉社)

 昔のドラマや映画の中には「ご近所さん」がそれぞれの家庭の事情を察し合って、支え合って暮らす風景が出てくるが、特に都内では、いまどきはお隣さんとも挨拶くらいのお付き合いしかないことも多いもの。一体、近所に住んでいるのはどんな人なんだろう? すぐ近くにいるのに顔しか知らない隣人の存在って、考えてみるとちょっとミステリアスかもしれない。現在放送中のイノッチ(井ノ原快彦)主演のNHK夜ドラマ『つまらない住宅地のすべての家』(10月10日スタート、全24回)は、そんなご近所さんたちの抱える「秘密」の不穏さがじわじわしみてくるホーム・サスペンス・ドラマだ。

 原作は津村記久子さんの同名小説『つまらない住宅地のすべての家』(双葉社)。津村さんといえば、2009年に『ポトスライムの舟』で芥川賞を受賞し、以来、数々の文学賞の常連となっている人気作家だ。本作は『小説推理』(双葉社)で連載されたのち、2021年3月に単行本化され、今回のドラマ化にあたって再び注目をあびている。

 舞台は近隣にスーパーとコンビニが1軒…

2022/10/27

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36歳、女、元優等生。地味な逃亡犯の目的は?『つまらない住宅地のすべての家』の執筆動機を津村記久子さんに聞いた!

津村記久子 つむら・きくこ●1978年生まれ。2005年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で太宰治賞を受賞してデビュー。09年「ポトスライムの舟」で芥川賞を受賞。『ミュージック・ブレス・ユー!!』『この世にたやすい仕事はない』『エヴリシング・フロウズ』『サキの忘れ物』など著書多数。

「出会いに恵まれない人生なんて、いくらでもあるじゃないですか。私はいい異性とかメンターに出会って人生が変わった、みたいな話が嫌いで(笑)。選ばれた人間の話は別に書きたくない。そうではなくて、誰かが一瞬だけ人生に差し込んできて、その一瞬の影響で自分の意思で変わっていける。そんな話をずっと書いている気がします」  津村記久子の小説を一度でも読んだことがある人なら、思わず頷いてしまうはず。芥川賞受賞作「ポトスライムの舟」、今秋に映画版公開予定のデビュー作『君は永遠にそいつらより若い』、昨年の弊誌「プラチナ本」にも選ばれた『サキの忘れ物』。そして最新作『つまらない住宅地のすべての家』でも、そのスタンスは一貫している。 「『小説推理』から連載依頼をい…

2021/4/6

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つまらない住宅地のすべての家 / 感想・レビュー

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ミカママ

読み友氏の厚意にて手に入った初読み作家さんの出世作(という認識で合ってる?)。登場人物の多いのは苦手、と常々感じていたのが、「これは大丈夫、めっちゃ面白い」と別の読み友氏の後押しもあってスラスラ読めた。几帳面な読者なら、各住民とその行動や思想をいちいちメモしながら読むところ、わたしはすべて「だいたい」で読んだが、それでもこういう形態は好きだなぁと思う。どんな人間にも「裏」や「他人に言えない部分」があるっていうこと(ミカママにもある・笑)終わり方もわたしの好み。読み友さんたち、ありがとう。

2022/06/10

まちゃ

津村さん初読み。登場人物が多く、最初は誰が誰やら。次第に明らかになっていく登場人物たちの内面と家庭の事情。映像化しても面白そうな町内群像劇。とある町の路地に面した十軒の家々に暮らす悩みやあきらめ、絆の喪失を抱えた人々。生気のない淀んだ住宅地を変えたのは、刑務所から脱走した女性受刑者。近所出身の彼女が近づいているという出来事で生じた小さな波乱が淀んだ感情をかきまわす。そして変わっていく人々の関係。すべての問題が解決したわけではないが、それでもいい方向に向かっていると希望の持てるラストでした。

2021/04/17

こーた

題名にもある、つまらない、をこれほどおもしろく描けることに驚嘆する。何気ない日常の景色があまりに巧くて、事件の核心に近づくほど退屈に思えてしまう、という顚倒さえ起きる。何もない住宅地だ。住民はみな倦んでいて、いずれはここから出ていきたいと考えている。そこへ逃亡犯が近づいてくる。事件だ。でもそんなことより洗濯物を取り込まなければならない。仕事へ、学校へ、病院へ行かなければならない。朝ごはんを食べないと。いいかげん起きよう。どんな事件があろうとも、その場所にはいろいろなひとが住んでいて、日常がある。逃亡犯を⇒

2021/03/22

とろとろ

路地を挟んで10軒の家が立ち並ぶ住宅地。そこに受刑者が刑務所から脱走したとのニュースが入る。住民は何人かで交代で見張りをはじめる。見張りを変わるにつれ、それぞれの家の実情と事情が連載小咄のように延々と続いていく。最初の頁にある見取り図を見返しながら、どこの家か何度も往復して読んでいたので頁が前に進まなかった。それでも、途中から住人のそれぞれの悩みや苦労や思惑が判ってくると同時に、それが少しずつ明るい方向に向かって気持ちに変化が起こりはじめ最後は何となくよい感じて終わるっていうのが、垣谷美雨的で面白かった。

2021/06/25

R

全然つまらないことない住宅地だった。傍目からは、何もない昔からの住宅地で、そこに住んでいる人たちの絶妙な人間関係を主軸にして、ある事件と、その過去とのつながりが描かれる物語。登場人物があれこれ出てくるのに、不思議と区別がついて、入り組んだ関係がなるほどと腑に落ちるのがすごい。平穏な毎日に潜む、犯罪の芽ともいうべき不平不満がリアルだった。誰でもが法を犯すかもしれないし、犯したものを助けるのかもしれない。

2021/07/11

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