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川のほとりに立つ者は

川のほとりに立つ者は

川のほとりに立つ者は

作家
寺地はるな
出版社
双葉社
発売日
2022-10-20
ISBN
9784575245721
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「川のほとりに立つ者は」のおすすめレビュー

「ディスレクシア」による生きづらさとは。読み書き困難な学習障害に「努力不足」のレッテルを貼られて生きる者の物語『川のほとりに立つ者は』

『川のほとりに立つ者は』(寺地はるな/双葉社)

 生まれつき備わっているものは、人によって違う。だが、その前提を私たちは忘れがちだ。自分にとっては造作もないことが、「できない」人もいる。それを見て「努力が足りない」とジャッジする人は、存外多い。

 反対に、「“できない”相手への対応がわからない」ことで、頭を悩ませる人も多いだろう。人の想像力が及ぶ範囲は、自身の体験の範疇であることがほとんどだ。「個」に合わせた対応には、知識と忍耐力のほか、時間とマンパワーが要る。

 寺地はるな氏による小説、『川のほとりに立つ者は』(双葉社)には、相反する両者の葛藤が丁寧に描かれている。

 本書の主人公・清瀬は、カフェの店長として連日超過勤務に追われていた。忙殺される毎日にあって、仕事の要領を得ないスタッフに苛立ちを募らせる日々。そんなある日、病院から1本の電話が入る。電話口で聞かされたのは、清瀬の恋人・松木が大怪我をして運び込まれたとの知らせだった。病院に駆けつけた清瀬は、そこである人物と出会う。その人物を通して、清瀬はこれまで自分が「見ようとしてこなかったもの」を痛烈…

2023/3/1

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「馬鹿な子だ」というレッテルは、その子の成長の芽を摘みかねない。寺地はるなの新作『川のほとりに立つ者は』は他人を尊重する大切さを再認識させる傑作だった

『川のほとりに立つ者は』(寺地はるな/双葉社)

 自分が当たり前にできることを、うまくできない他人がいる。それができない人を「ダメな奴だ」と切り捨てるのは簡単だ。けれどその振る舞いは、きっといつか、自分も誰かに切り捨てられる未来に繋がっていく。そうならないために、私たちにはいったい何ができるのか、寺地はるなさんの小説『川のほとりに立つ者は』(双葉社)は切々と訴えかけてくる。

 物語の発端は、一本の電話。恋人の松木が怪我をして運ばれ意識不明だと知らされた清瀬は、駆けつけた病院で、松木の友人・樹も同じ状態であること、松木が加害者である可能性があることを聞かされる。動揺のなか、松木の実家に電話してみれば、母親は「昔から乱暴者だった」と突き放し、心配するそぶりもない。

 清瀬の知る松木は暴力とは無縁の穏やかな男だっただけに、混乱は深まる。いったい何が起きたのか、真相を探るうち、清瀬は、松木のある秘密に触れることとなる。

 秘密の陰には、一人の人物の存在があった。「文字を書くことができない」という一点を除けば発達に遅れはないその人物が、学習障害かもしれないと、う…

2022/11/28

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『汝、星のごとく』(凪良ゆう/講談社)

【あらすじ】 風光明媚な瀬戸内の島。高校時代に恋人同士になった暁海と櫂。卒業後、次第に広がるふたりの間の溝……。途方もない痛みを抱えながら、それでも自分の人生をつかもうとあがくふたりの姿は、きっと、不器用で正しく生きられない私たちにとって、新たな救いとなるに違いない。

【著者プロフィール】 凪良ゆう●京都市在住。2007年に初著書が刊行されデビュー。BLジャンルでの代表作に21年に連続TVドラマ化された「美しい彼」シリーズなど多数。17年に『神さまのビオトープ』(講談社タイガ)を刊行し高い支持を得る。19年に『流浪の月』と『わたしの美しい庭』を刊行。20年『流浪の月』で本…

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2023/4/12

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川のほとりに立つ者は / 感想・レビュー

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さてさて

“新型ウイルスが広まった2020年の夏。彼の「隠し事」が、わたしの世界を大きく変えていく”と、内容紹介にうたわれるこの作品。そこには『意識不明の重体』となって五ヶ月ぶりに再会した男性に隠された真実に向き合っていく清瀬の物語が描かれていました。コロナ禍を極めて自然な描写で作品背景に落とし込むこの作品。”小説内小説”の存在が、物語に思った以上の奥深さを付与していくのを感じるこの作品。寺地はるなさんには珍しい、ミステリーという舞台設定の上に、人の心の機微を細やかに映し取っていく新鮮な読み味の作品だと思いました。

2022/10/22

starbro

寺地 はるなは、新作中心に読んでいる作家です。 本書は、青春群像劇、中篇のせいか、今回はあまり刺さりませんでした。 https://www.futabasha.co.jp/book/97845752457210000000

2022/12/09

まちゃ

常識だと思っていることが、実は物事の一面だけを捉えた思い込みなのかもしれない。読み終わった後に、そんな思いを抱かせる物語。読後感は良かったです。篠ちゃんのセリフに共感「ほんとうの自分とか、そんな確固たるもん、誰も持ってないもん。いい部分と悪い部分がその時のコンディションによって濃くなったり薄くなったりするだけで」

2022/12/25

bunmei

人の奥底に抱える痛みや辛さは、本人でなければ分からない葛藤がある。それは、その人の育った環境にもよるが、生まれ持った特性や障がいという場合もある。それに気づき、手を差し伸べる独りよがりな優しさが、却ってその人を苦しめ、反感に繋がる現実もあり得る。しかし、それでも最後まで「その人の明日が、よい明日になるように…」と願うことに、人としての尊厳と素晴らしさであると思う。それを、男同士の友情と不器用な恋愛を通して訴えてきている。P192の小学校6年の卒業文集に、この作品に込めた、著者の熱い思いが感じ取れた。

2023/02/26

kotetsupatapata

星★★★☆☆ いつもの寺地さんの作品同様に、世間一般の「普通」から少し外れた人たちを描いたストーリーでしたが、天音や松木母のようなクセのある登場人物も多く、綺麗事で弱者に寄り添うというよりかは、「分かりもしないくせに分かったふりするな」と突き放したようにも受け取られる読み口で、今までの寺地さんの作品とは毛色が異なると思えました。 と偉そうな感想を述べるのは天音の言葉を借りれば、ただ人より恵まれた立場だからなのかな?  もし貴方ならどうする?と読む人に問いかけられた1冊でした。

2023/02/23

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