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二千七百の夏と冬(下) (双葉文庫)

二千七百の夏と冬(下) (双葉文庫)

二千七百の夏と冬(下) (双葉文庫)

作家
荻原浩
出版社
双葉社
発売日
2017-06-15
ISBN
9784575520071
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「二千七百の夏と冬(下) (双葉文庫)」のおすすめレビュー

ダムの工事現場で発見された“縄文人男性”と”弥生人女性”の人骨――時代のうねりに翻弄された恋愛とは?【第5回山田風太郎賞受賞作】

『二千七百の夏と冬(上・下巻)』(荻原浩/双葉社)

 今年の夏は「縄文」が熱かった。きっかけとなったのは東京国立博物館で開催された特別展「縄文―1万年の美の鼓動」だ。縄文のビーナスや火焔型土器など国宝6点が集結とあって多くの人が来場。縄文美術にスポットをあてた内容だけに、あらためて多くの人が縄文人のユニークなセンスに驚かされた。

 ところで現代人には美的センスが光って見える遺物も、当時の彼らにしてみればあくまで「暮らしの道具」。当然、ひとつひとつから彼らの生活がしのばれるが、それでも「狩猟採集社会/集団生活/アニミズム/獣の革の服」といったお決まりのイメージばかりで、なかなか彼らの「人生」に思いをはせるまではいたらない。当たり前のことだが、縄文人も我々と同じ人間だ。同じように泣いて、笑って、恋をして生きていたのだろう……そんな素朴な気づきに抜群のリアリティを与えてくれる興味深い小説がある。人気作家・荻原浩さんの第5回山田風太郎賞受賞作『二千七百の夏と冬(上・下巻)』(双葉社)だ。

 ダムの工事現場で縄文人男性の人骨が発掘されたことから始まる物語の舞台…

2018/10/28

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縄文時代に生きた少年の戦いと愛  人間の根源を描く歴史ロマン『二千七百の夏と冬』

『二千七百の夏と冬』(双葉文庫) 北関東のダム建設予定地で、縄文人の古人骨が発見された。推定される年齢は10代半ば、性別は男性。新聞記者の佐藤香椰は、この発見を連載企画にできないか検討を始め、発掘を進める地元の国立大学准教授・松野から情報を集めていく。やがて、古人骨は約2700年前のもので、その左手には米の稲らしきものが握られていたことが判明。さらに、縄文人の古人骨のすぐ隣に同じく10代半ばの女性と推定される渡来系弥生人の古人骨も発見された。縄文人の右手は弥生人の左手にしっかりと重ねられ、2体は互いに向き合った姿で寄り添うように横たわっていた。この男女に何があったのか。ふたりは縄文と弥生の間をつなぐミッシングリンクなのか?

第5回山田風太郎賞を受賞した荻原浩の『二千七百の夏と冬』。主人公は、この古人骨として発見された縄文人、15歳の少年ウルクだ。ピナイと呼ばれる村の集落で狩猟採集をする部族のひとりとして生きるウルクは、一人前の男として認められるため、狩りで手柄を立てることに懸命になっていた。そしてウルクは知りたかった。死んだ父は皆がいうように本当…

2017/7/6

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二千七百の夏と冬(下) (双葉文庫) / 感想・レビュー

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KAZOO

後半に入ると主人公はかなり様々な経験をします。当然16歳でその生涯を終えるわけですがそこに至るまでの人間としての成長などが縄文人と弥生人との関連からもうまく描かれているように感じました。このような分野の小説も実験的な試みとして楽しめました。

2017/08/06

ちょろこ

下巻の一冊。上下巻合わせて、一言でいうととてもドラマチックな時間物語だった。ウルクとカヒィ、二人の刻んだ時が読後、長時間にわたる温かな余韻をもたらす。人との運命とも言える出会いを経験し、言葉なんかよりも先に魂が惹かれ合う姿。戦なんかよりも遥か昔からこういう愛の繰り返しと積み重ねによって今が続いていることに想いを馳せずにいられない。現代パートの重ね合わせ、新聞記者の香椰の疑問、心情がふと心立ち止まらせてくれたのも良い。ラストは国籍という括りじゃなく、皆、同じ人間という括りを二人の絡み合う指先から強く思った。

2023/04/11

あきぽん

2700年前、弥生人のクニに入った縄文人少年ウルクが見たものは…。上巻で森の人・縄文人の生活を書きつくした作者は、下巻で草の人・弥生人の生活を書きつくす。異民族の衝突、文明の進化の代償に失うもの、人間の恐ろしさなど現代的なテーマも考えさせながら、大昔の日本の息遣いを間近で感じることの出来る本だった。私達日本人は、みな縄文人と弥生人が恋をして生まれて来た混血児なのだ。

2018/11/21

相田うえお

★★★★★20041【二千七百の夏と冬(下) (荻原 浩さん)】ダム建設予定地で手を繋いだ男女の骨が発見された〜!一人は縄文人骨で、もう一人は弥生人骨、何で〜?と、上巻から下巻にこんにちは!上巻のラストはビックリでしたからねぇ。さあ、どうなる!現代パートでのスパイスが縄文パートをさらに美味くしながら、前半は、熊谷達也さんの『邂逅の森』を思い出してしまった熊シーンにドキドキ〜!後半はハラハラ〜ラストで目頭がぁー! これは小説ですけど、実際に発掘された骨にも、それぞれに素敵なストーリーがあるかもしれませんね。

2020/04/12

ぷう蔵

うーん、なんとも言えない読後感。こんな時代を題材にした本を読んだ事ないからだろうか。これは歴史小説なのか?純愛小説なのか?でも楽しく読ませていただいた。人間同士の諍いってこんな感じで始まったのだろうなぁって感じである。米って確かに至福の実であり、悪魔の実でもあるのかも。実際、日本は江戸時代まで、米の取れ高で武将、州の価値、規模を示していた。現代の地球を考えると石油も同じか…。石油を握ったものが世界を動かせる。第二次大戦もきっかけは石油…。人間は美味いもの、便利なものを味わうと元には戻れない生き物って事。

2017/10/20

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