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我が心の底の光 (双葉文庫)

我が心の底の光 (双葉文庫)

我が心の底の光 (双葉文庫)

作家
貫井徳郎
出版社
双葉社
発売日
2018-04-11
ISBN
9784575520972
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「我が心の底の光 (双葉文庫)」のおすすめレビュー

母は死に、父は人を殺した――。人としての何かが欠落した息子の復讐計画。「驚愕のラスト」を読者はどうとらえる?

『我が心の底の光』(貫井徳郎/双葉社)

 何かを奪うためではなく取り戻すための犯罪とは、何と哀しいものなのだろうか。貫井徳郎の作品を読むと、そんな感慨に打たれることが多いのだが、本作『我が心の底の光』(双葉社)を読んで改めてそれを強く感じた。

 主人公の峰岸晄は、ずっと奪われてきた人間だ。彼は5歳にして母親を失い、父親は人を殺した。伯父夫婦に引き取られたものの、血のつながらない伯母はひたすら冷たく、晄が厄介者であることを隠しもしない。唯一の血縁者である伯父も、世間体から晄を引き取っただけで、保護者らしいことをしようとはしない。学校では殺人者の子として陰湿ないじめに遭い、心を許す友達もいない。学校でも家でも、彼は目障りな異物だ。

 しかしそんな状態に置かれていても、晄は意に介さない。なぜなら、5歳で両親と離別する前、彼は絶対的な孤独と絶望を味わっていたからだ。その体験について詳述は避けるが、8年前に大阪で起こった児童虐待の某事件を思い出す人も多いはずだ。その凄惨な体験こそが晄の人格形成の核となり、後に彼の人生を懸けて行う復讐計画のモチベーションとなる。

2018/6/30

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我が心の底の光 (双葉文庫) / 感想・レビュー

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のり

凄惨なネグレクト被害で生死をさ迷った「晄」。父は母を殺し、叔父夫婦に引き取られたが、幼少の傷は重くのしかかり、希望を持つ拠り所さえない。「晄」自身も悪に手を染める生き方を選ぶ事に…それは心に秘めた思いを遂行する為に…ただ一人「晄」に対して手を差し伸べようとした「怜菜」。あまりにの衝撃のラストに全身から力が抜ける。全てに救いがなく脱力感がハンパない。

2019/04/11

ミッフー

救いようのない不幸せ😱明日に対し未来も希望もない🥶脳天気な青春映画などとは違い、僕には寧ろこの方が現実的でスッと心に入ってきました👍壮絶な幼少期から自分を支えてくれた女性、そんな人の命より唯一の心の支えであった捨て猫を譲ってくれた従兄弟を優先した晄。常識では考えられぬ事だが、生きる目的が怨みはらす為だけのものであるならばそれもありかも🤔でも一番怨みをはらしたかった相手は、なんと言っても淫売鬼畜である実母なんだろうけど😢子供より己の享楽を優先、これまた悲しき女の性かな🤣人間らしい小説でした👍

2019/10/11

あも

なんて意地の悪い作家なんだろう。虐待により筆舌に尽くし難い過酷な幼児期を過ごし、親戚に引き取られるも、そこでも召使いのような扱いを受け、学校では虐められる。断るのが面倒だ…と言われるがままに万引きをする『晄』。唯一まともに接してくれるのは幼馴染みの玲奈のみ。全てを諦めたかのように流され闇金やグレーの業界で働く彼が暗闇の中で光を見つけるラストを読者は望まずにはいられない。なのに…。人がいかに他者に勝手な思いを仮託する生き物かを突きつけられるラスト。"読者"という存在を裏切るどんでん返し。後味は悪いがさすが。

2019/07/30

NADIA

主人公の経験した凄惨な幼少期。母子家庭の母親が幼児であるわが子をごみ屋敷に閉じ込めて遊びまわり数日戻らない生活。実の父親の暴力により母が殺害されて「殺人犯の息子」となった主人公の辿るその後の人生は。淡々と語られる彼の犯罪史。その目的が復讐であることは、物語の中盤過ぎに知らされるのだが、何に対しての復讐なのかはわからず、誰もが予想外の理由であることが最後に明らかになる。全体的に暗く重い場面が続くが、サクサクととても読みやすい。あとがきを読むとその理由に大いに納得させられた。

2021/01/15

あすなろ

晄の人生のピークは自我が生まれる前に訪れていたのだ。そして死の淵を絶望のなか見て、抗えず仕方ないと思う幼き日々。そんな晄が何のために半生を生きてきたか?何に復讐するために生きてきたのか?それを貫井氏の筆で共に辿る作品。僕は晄の半生について経験として全く分からないことはある種の幸せであり、その一方で全く分かって上げることが出来ない自分自身へのある種の憤りと情けなさというそれら全てを自身の心の部分部分に内包しながら自分自身と向き合い読了したのである。

2020/01/25

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