純 (百年文庫 96)
純 (百年文庫 96) / 感想・レビュー
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
北の山にはまだ雪が残っているだろうか、最近めっきり暑くなってしまった日に新雪を踏む音をおもう。この本を読んで、宮沢賢治の詩のようなひとを見た気がした。 「丈夫な体をもち、慾は無く、決して怒らず、いつも静かに笑っている。東に病気の子供あれば、行って看病してやり、西に疲れた母あれば、行ってその稲の束を負い、南に死にそうな人あれば、行って怖がらなくてもいいと言い、北に喧嘩や訴訟があれば、つまらないからやめろと言い、みんなにでくのぼーと呼ばれ、褒められもせず、苦にもされず、そういうものに、わたしは、なりたい」
2020/04/28
新地学@児童書病発動中
これまで読んだ百年文庫の中で一番良かった。純粋さをテーマにした三篇。三つの短編が微妙に響き合って、純粋さの真の意味を読者の胸に問いかける。武者小路実篤の「馬鹿一」は天衣無縫の男が主人公で、読んだ後に胸の中を清々しい風が通り抜けていく感じ。宇野千代の「八重山の雪」は純愛の物語。一番の好みは高村光太郎の「山の雪」。戦争賛美の詩を書いてしまった光太郎が苦しみながら、岩手で自給自足の生活をしていた時のエッセイ。困難の中で澄んだ心を保ちながら生きる姿勢は、『智恵子抄』の抒情的な美しさにつながるものを感じた。
2014/12/12
モモ
武者小路実篤『馬鹿一』自然を愛し、自称詩人で画家だという下山一(はじむ)。みなで目を覚まさせようとするも、自らを信じる姿はゆるがない。すこし周りが意地悪にも思える。高村光太郎『山の雪』ふるさとの雪の降る季節の描写が美しい。一人でいる家に来るネズミまでも愛しい存在に見える。動物の足跡、人の足跡、そして夜の雪の原の表現がとても美しくて好き。宇野千代『八重山の雪』恋に落ちた英国海兵隊ジョージ・ヘーデンとはる子。一生懸命に日本の暮らしに順応して愛をはぐくむ様子がまさに純という感じ。百年文庫の中で好みが上位の一冊。
2022/11/23
臨床心理士 いるかくん
3人の作家の3篇から成るアンソロジー。愚かなのか賢人なのか、「馬鹿一」。眩いばかりの、「山の雪」。一途な思いに身も心も投げ出す、意外にもスリリングな「八重山の雪」。
2015/01/31
あじ
どのくらいの年月が経ったのかは、、、明らかではない。待ち続けるはる子の昔語りが影となり、私に付きまとう。実話をもとに書き下ろした宇野千代「八重山の雪」が主席。「馬鹿一」武者小路実篤、次席。
2019/09/25
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- 出版社
- 左右社
- 発売日
- 2019-11-01
- ISBN
- 9784865282511