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完璧じゃない、あたしたち

完璧じゃない、あたしたち

完璧じゃない、あたしたち

作家
王谷晶
出版社
ポプラ社
発売日
2018-01-26
ISBN
9784591155363
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「完璧じゃない、あたしたち」のおすすめレビュー

窮屈な価値観に縛られた女性たちの物語。女×女の名前のない関係に共感必至!

『完璧じゃない、あたしたち』(王谷晶/ポプラ社)

 ストレスが溜まったとき、心を落ち着かせたいとき、とにかく何かにすがりたいとき、何度でも戻ってきたくなる本があるというのはいいものだ。『完璧じゃない、あたしたち』(王谷晶/ポプラ社)はまさしくそんな短編集である。

 本作には、女性同士のさまざまな関係が描かれた23編が収められている。友情もあれば親子関係もあれば腐れ縁もあれば恋愛もあるし、どう表現したらいいかわからないような関係もある。同時に、登場人物の女性たちは皆、女性であるということだけで周囲から向けられる窮屈な価値観に縛られてもいる。そしてその窮屈さにはいろいろな種類があって、縛られ方も窮屈さも人それぞれだ。だから大変なのだ。冒頭の一編「小桜妙子をどう呼べばいい」を読むとあらためて気付かされる。

 小桜妙子、東京都大田区にて一人暮らし中の30歳。彼女は今、自分の一人称をどう呼べばいいか悩んでいる。私、あたし、妙子、俺、オラ……どの人称もしっくりこない。〈己のことは最早、小桜妙子と呼ぶ〉ほかないのである。便宜上〈わたし〉を使用しているが、自分にまっ…

2022/10/6

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完璧じゃなくてよくない? 欠陥だらけの私たちを男よりも癒してくるヤバイ小説!

『完璧じゃない、あたしたち』(王谷 晶/ポプラ社)

 人は誰だって不完全な存在なのよとか、誰にだって悩みやコンプレックスはあるものよとか、外野からいくら言われたってなんの慰めにもならない。いま、私がつらくて苦しくて、欠陥だらけの自分にいやけがさしている。自分の欠陥ひとつひとつが現実をよくないものへと変えている。そう思ってしまうことだけが世の中で唯一の重要事項で、他の人がどうかなんてどうだっていい。そんなことを一度は思ったことのある人にはぜひとも読んでほしい小説が『完璧じゃない、あたしたち』(王谷 晶/ポプラ社)だ。

 23篇の短編から成る本作は、ほんとうに一人の著者が書きあげたものかと疑いたくなるほどバリエーションに飛んでいる。

 1作目「小桜妙子をどう呼べばいい」は、どの一人称で自分を呼んでもしっくりこなくて悩んでいる、上品できまじめな女性が語り手だ。

 2作目「友人スワンプシング」で登場するのは栃木のヤンキーで、親友が人魚に変身してしまい溜池に沈んでいくというシュールなファンタジー。

 3作目「ばばあ日傘」は、元女中だった老婆が語る、御屋敷で起きた愛憎…

2018/2/9

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完璧じゃない、あたしたち / 感想・レビュー

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ずっきん

『ババヤガの夜』がツボど真ん中だったので手に取る。しかもトレヴァー短編集の直後という荷を負わせての読書。ハードルはもう日本新記録級の高さである。ハイ、飛んだ!ジャンルとシチュエーションの幅広さ、オープンエンドも巧い。漫画では『モンキー・パトロール』なんかでとっくに表現されていた世界が、小説界は相変わらず古臭いのうーと感じることしばしば。そんな不満を吹き飛ばす作家さんたちが、やっと表に出てきてくれたんだなあと感慨深い。キレッキレの比喩と口語の勢いが、読んでいてひたすら心地良い。もう大ファン♡追います♡

2021/02/03

あも

自分の一人称をどうすべきか問題から、目が覚めるとへそから音楽が聞こえたり熊になったり、落語やゾンビのオマージュ、偏見に差別に、ありとあらゆるバリエーションのごった煮のような短編集。どの話も女性と女性の話ではあるが、特にセックスが絡まない話も多く、性愛がテーマの話でも良い意味でポップに描かれているので同性愛だなんだと気にせず様々な物語を楽しめる。ちなみに思春期に一人称を切り替えるという壁を超えると思いますが、自分は『ぼく→俺』への移行がスムーズに行かなかったため、未だにどの一人称を使っても違和感があります。

2019/10/07

いたろう

著者初読み。1編が10数ページ程、レズビアンであることを公表している著者によるレズ話から、SF、ファンタジー、そして、ゾンビが出てくる話まで、女性を主人公にしたバラエティに富んだ短編23編。男女のセックスについての話もあるものの、それを語り合うのは女性同士だったり、全編を通じて女性✕女性の構図。ただ、レズ、セックスを題材としても、そこにあるのは官能というより、あっけらかんと明るい世界。そんな中で、性描写が全くない、東京在住の韓国人女性と黒人女性が交流する話、「東京の二十三時にアンナは」がなかなか良かった。

2019/04/11

野のこ

漠然と不安になったり 路頭に迷ったり。完璧じゃない ちょっと不器用な女の子たち。だけど、女の子同士が寄り添うと不思議と癒されたり 自分らしくなれたり。初読み。玉谷さんの文章は不思議な魅力を醸し出してました。恋愛にファンタジーにSF、ぞっとするホラーまでバリエーションに富んだたくさんの物語たちは一気読みできずに数日に分けて完読。なんだろう新しい世界が見えそう!さわやかでフレッシュぴっちぴちな気分です(笑)

2018/03/15

信兵衛

どの篇も、いろいろスパイスが効いた作品ばかりですから、それなりにたっぷりと、面白く読みました。

2018/03/02

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