綾峰音楽堂殺人事件
「綾峰音楽堂殺人事件」のおすすめレビュー
音楽堂のラスト・コンサート中に起こった殺人事件、その真相は?『綾峰音楽堂殺人事件』
『綾峰音楽堂殺人事件』(藤谷治/ポプラ社)
小説には、五感に訴えてくる文章がある。たとえば、異国の風景が見えるような文章。たとえば、美味しい香りが漂ってくるような文章。たとえば、人肌の手触りを感じられるような文章。そういった分類で言うならば、青春音楽小説『船に乗れ!』(ポプラ社)などで知られる藤谷治氏の文章は、まさに「聴こえる」文章だ。作中に流れる音楽の描写はもちろん、物語の進み方、登場人物の発言など、なににつけてもテンポがいいのは、藤谷氏自身の音楽に対する造詣が深いことと無関係ではないだろう。
そんな著者の『船に乗れ!』以来の音楽モノとして刊行されるのが、音楽ミステリ『綾峰音楽堂殺人事件』(藤谷治/ポプラ社)だ。
物語の舞台となるのは、東京から新幹線に乗り、さらに在来線で3時間ほど揺られたところに位置する綾峰県。主人公である小説家のフジツボ・ムサオは、その地方都市にある綾峰県立音楽堂を訪れていた。英米文学の教授で、音楽評論家としても著名な畏友・討木穣太郎氏に、強引な誘いを受けたからである。
討木氏がフジツボに見せようとしていたのは、綾峰県立音…
2019/6/25
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綾峰音楽堂殺人事件 / 感想・レビュー
やま
綾峰音楽堂殺人事件 2019.06発行。字の大きさは…字が小さくて読めない大きさ。 物語は、古い綾峰音楽堂の建て替えと、それに伴って起きる地方オ―ケストラ・綾峰フィルの解散問題の渦中でおきた殺人事件です。 最初読んでいて、これはサスペンスなのかなと疑問を持ちました。それぐらい、地方オ―ケストラの現状を詳しく書いた本です。 この本は、字が小さくて読むのを何回か中止しょうと思いましたが、最後まで丁寧に読めて良かったです。読むのには3日かかりました。 藤谷治さんの本を読むのは初めてです。
2019/10/05
yukision
財政難の地方都市で音楽堂やオーケストラの廃止を先導していたDJが殺される。探偵役の大学教授の活躍を友人の作家目線で語られるところはホームズっぽい。犯人捜しというより、その事件の背景が怖い。
2020/02/06
kei302
地方の一都市にプロオケは必要なのか?図書館との対比にナルホド。「図書館は儲からない。けれど存在価値があると、多くの人から認められている。綾峰フィルだって、音楽に関心のない、5秒で寝てしまう人のためにも演奏しているんです。人生のいつかどこかで、図書館を利用することになるかもしれない。ふっと思い立って、クラシック音楽を聴いてみる気になるかもしれない」随所に現れる藤谷的皮肉が興味深かった。討木には再登板してもらいたい。
2019/09/18
雪紫
取り壊しが決まった音楽堂で解散決定の地方オーケストラが最終公演を迎えるなか事件は起こった。殺人事件とタイトルにあるものの、ミステリと言うより事件に至るまでの経緯ーー地方オケや擁する地方都市の苦しい現状や扇動の恐ろしさを書いた小説(ついつい「ゼロ時間へ」を思い出す)。とりあえず自分の活躍を本に頼んで大丈夫か自称人間嫌いのお節介な探偵役(笑)と思いながら、記録者のツッコミを含み笑いしながら読んでたら、ラストにゾッとくるものが・・・。図書館と地方オケとの対比の発言が印象的。
2019/11/14
mayumi
助成金が廃止され、解散せざるをえなくなった地方オーケストラの最終公演で一人の男が殺される。殺された男は、オーケストラを解散に追いやったラジオ局のDJだった…というストーリー。ハイドンの交響曲「告別」は、最後に演奏者が一人一人減っていく、という面白い手法が取られている楽曲。この楽曲が、最後の最後で事件の真相に近づく手がかりとなる。もちろん、それは探偵役・討木の憶測ではあるけれど、なんとなく「オリエント急行殺人事件」を思い起こさせるものだった。なんとも言えない余韻が残った。
2020/04/25
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