すべて忘れてしまうから
「すべて忘れてしまうから」のおすすめレビュー
燃え殻の忘れられない記憶の断片――ごくありふれた人生に多数のロマンや物語が宿る
『すべて忘れてしまうから』(燃え殻/扶桑社)
WEBで連載されたエッセイを一冊にまとめた、燃え殻『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)は、鮮烈なデビュー作だった。普段はテレビ制作会社で働く彼の情緒的な文章は、糸井重里、大根仁、小沢一敬、堀江貴文、会田誠、樋口毅宏、二村ヒトシから絶賛され、ヴィレッジ・ヴァンガードは全店で品切れ状態が続いた。
そんな燃え殻の新作は『すべて忘れてしまうから』(扶桑社)。反語的なタイトルだと思った。著者は幼少期から最近までの記憶を振り返り、印象的な出来事を思いつくままに書き連ねていく。「すべてを忘れてしまう」人の綴る文章とは思えない。
子供の頃いじめられていて、ある日登校したら、机の上に花瓶が置いてあった話。深夜ラジオの女性パーソナリティーの艶っぽい声に魅せられ、ラジオ局の前で出待ちをした話。
他にも、クリスマスにテレクラに行った話、プロレスラーを目指していた友達の話、仕事をサボって見知らぬ街を訪れた話、極度の頻尿で難儀する話等々。ページをめくるごとに、呑み屋で旧友のとりとめのない話を聞いているように思えてくる…
2020/8/8
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2023/9/23
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すべて忘れてしまうから / 感想・レビュー
よつば🍀
燃え殻さんのエッセイ50篇が収録。合間に長尾謙一郎さんのイラストが挟まれる。燃え殻さんの回顧録は哀愁が漂い、どこかおかしみもあるのだが、なぜだか寂しい気持ちになって来る。作者のエピソードを読みながら、それに呼応する様に自身の記憶が刺激され、数々の出来事が蘇る。嬉しかった事も楽しかった事もたくさんあったはずなのに、思い出すのは悲しかった事や辛かった事だったりしてなんだか切ない。自分にとってかけがえのない大切な人が死んでも世の中は何ら変わりなく規則正しく過ぎて行く。タイトルを見返し刹那の悲しみに浸る読書時間。
2020/09/08
いこ
燃え殻さんは繊細な女性かと、なんとなく思っていた。そして、この本を読み驚いた。著者は男性だった。でも、その「人となり」は、当たらずとも遠からずだった。繊細でナイーブで、そして「身体が大体の人より弱くできているみたい」な人だった。とてもキレイで、とてもノスタルジックで、とても淋しい文章を書かれる。オチのところで、何度も、理由のわからない涙が落ちそうになった。「さみしい。さみしい。あの人に会いたい」淋しくて、でも電話しても誰も捕まらない、そんな夜に読んだらいいかもしれない。確実にもっとさみしくなれるから。
2021/09/26
ゆのん
エッセイ。キン肉マンやクラッシュギャルズなどが登場する話に「おや?」と思い調べてみたら1歳違うだけの同年代だった。そのせいかとても懐かしい気持ちで読了。元々エッセイ自体好きではあるが、上から目線の押し付けがましいものにたまに当たってしまう。燃え殻さんのエッセイはすーっと自然に入ってくる感じで素直に心地良く読める。精魂尽き果てた時にふらーっと旅に出る…なかなか真似出来ないが、このエッセイを読んだ後は旅から帰った時の様なスッキリとした感じになる。心配事や悩み事が出来た時にまた読みたい。182
2020/07/31
アキ
エッセイ集。笑ってしまうこともしんみりすることも、力が抜けてる感じが持ち味。憧れていた大槻ケンジさんと初めて会った時に教えられた。「人生はままならない。だから人生には希望が必要だ。」一話ごとにシュールな挿絵がある。面白かったのは「偉そうにするなよ。疲れるから」「MTVでも見ていけよ」「俺、もう16だからタバコやめるわ」「勘違いしないでね、と彼女は優しく囁く」「アンタさ、つんくに似てる?」「男と女は、世界でふたりぼっちだったんじゃないだろうか」「記憶は優しい嘘をつく」など。エッセイの中に確かに希望はあった。
2020/11/22
akiᵕ̈*
ハッと目に飛び込んだジャパンブルーの装幀に惹きつけられ手にとる。燃え殻さんの日常が回顧録として垣間見れる50篇のエッセイ。とてもさりげない読みやすさで、なんだか一緒に同じ気分を味わっているかのようだった。シュールさとエモさ儚さが同居したエピソードの数々が、長尾さんのイラストと共に、なんとも言えない居心地の良い読書時間を作ってくれた。
2020/09/09
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