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水車小屋のネネ

水車小屋のネネ

水車小屋のネネ

作家
津村記久子
出版社
毎日新聞出版
発売日
2023-03-02
ISBN
9784620108629
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「水車小屋のネネ」のおすすめレビュー

筒井康隆大絶賛の【谷崎潤一郎賞受賞作】。姉妹としゃべる鳥が織りなす40年の希望と再生の物語

『水車小屋のネネ』(津村記久子/毎日新聞出版)

 読後、強く「ああ、幸せだ」と思った。全身に立つ鳥肌。何かが込み上げてきて、何だか泣きたくなってしまった。そんなこの上ない読書体験を味わわせてくれたのが、『水車小屋のネネ』(津村記久子/毎日新聞出版)。第59回谷崎潤一郎賞を受賞し、「本の雑誌」が選ぶ2023年上半期ベスト第1位にも選ばれた、希望と再生の物語だ。

 実はこの作品は、谷崎潤一郎賞を受賞した際、名だたる選考委員たちから絶賛を受けている。筒井康隆は言う。

「小生、老齢なのでそろそろ選考委員を辞退しようかなどと考えていたのだが、こんな作品に出会えるのはこの賞しかないので、口にはしなかったのである」

 小説界の巨匠にそこまで言わしめる小説とはどのようなものなのだろう。そう思って、ページを繰れば、心洗われるとはまさにこのこと。「こんな素晴らしい小説に出会えるから本を読むのはやめられない」と思わされるほど、幸福な体験が私を待っていた。

 この物語で描かれるのは、1981から2021年まで40年間に及ぶ、ある姉妹の年代記だ。物語の中心となるのは、高校を卒業し…

2024/1/11

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「2024年本屋大賞」ノミネートの10作品を紹介。川上未映子のクライム・サスペンス小説や女子高生の青春爆走ストーリーなど

 2024年2月1日(木)に、21回目となる「2024年本屋大賞」のノミネート作品が発表された。全国の530書店、736人の書店員によって選ばれた上位10作品のうち、大賞に輝くのは一体どの作品なのだろうか。

 本稿では、ノミネートされた10作品のあらすじをご紹介。どの作品が大賞になるのか予想しながら、作品に込められたメッセージに想いを馳せてみてほしい。

まとめ記事の目次 ●黄色い家 ●君が手にするはずだった黄金について ●水車小屋のネネ ●スピノザの診察室 ●存在のすべてを ●成瀬は天下を取りにいく ●放課後ミステリクラブ 1金魚の泳ぐプール事件 ●星を編む ●リカバリー・カバヒコ ●レーエンデ国物語

金とは、生きるとは何かを問いかける『黄色い家』

『黄色い家』(川上未映子/中央公論新社)

 同作は、芥川賞作家・川上未映子が2023年2月に発表したクライム・サスペンス小説。“黄色い家”に集う少女たちの危険な共同生活を描いた作品で、「王様のブランチBOOK大賞2023」や「第75回 読売文学賞(小説賞)」といった数々の賞を総なめにしてきた。

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水車小屋のネネ / 感想・レビュー

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starbro

津村 記久子、2作目です。貧窮姉妹と鸚鵡の40年間に渡るクロニクル、群像劇、読み応えがありましたが、新聞小説のせいか、少し冗長な感じがしました。 https://mainichi.jp/%E6%B0%B4%E8%BB%8A%E5%B0%8F%E5%B1%8B%E3%81%AE%E3%83%8D%E3%83%8D/

2023/04/08

美紀ちゃん

母子家庭。短大の入学金が母の気まぐれで転用され払えず短大に行けない。怒鳴る男を連れ込む母。家にいたくない。妹も可哀想。高校を卒業して独立したいと考えた理佐。であれば妹も。住み込みで賄い付きの仕事を見つけて隣の県に移住。 8歳の妹を育てながら働く姉。すごいことだと思う。母の婚約者に押しかけられた時に藤沢先生が味方をしてくれて良かった。律の先生なのに理佐のこともかばってくれた時のことスカッとした。7の段の掛け算を言えるネネ。賢い。受験の相手も。たくさんの人が姉妹を支え助けてくれた。優しさの連鎖。温かい話。

2024/02/17

とろとろ

高校を卒業したばかりの18歳の主人公は8歳の妹が母の恋人に虐待されていることを知り、2人で家を出て山あいの町にたどり着いて暮らし始める。決して裕福とは言えなかったが、町の人はみな過度に優しすぎず出来る範囲の親切で二人を扱ってくれている。そういう人達に見守られてきた事から、自分たちの人生も少しずつ修正してよい方向に持っていくことが出来るようになり、また新しくやってきた人達には出来る範囲の親切をしてあげる。「自分はおそらく、これまでに出会ったあらゆる人々の良心でできあがっている」。究極の性善説な話でした。

2023/06/05

のぶ

ほのぼのとした物語だった。主人公は理佐と律の姉妹。始まりは1981年。姉の理佐は短大への進学が決まっていたが、母親が入学金を交際中の男に渡してしまったために、諦めることになった。妹の律が男から冷たい仕打ちを受けていることもわかり、住み込みの仕事を探して二人で家を出る決意をする。山間の小さな町にあるそば屋の仕事を見つけるのだが、「鳥の世話じゃっかん」という謎の付記がある。この鳥というのが、ネネである。それから40年にわたる話だが、大きな出来事は特に起こらないのになぜか人との触れ合いが心を打つ作品だった。

2023/03/21

TATA

津村さんは7冊目、多分これがベスト。津村さんの作品といえば、やたらとマニアックな登場人物の好み、それなのに舞台設定は妙に普遍的で、そのギャップにいちいち笑ってしまうのですが、これはほぼ人間の不思議な鳥であるネネと周りの人たちのとても素敵なお話。そもそもネネが一番不思議な舞台設定なのだけど、だからこそ他の人達の素朴さ優しさが際立つ。ホント、素敵なストーリーでした。だって、六波羅探題とか貧窮問答歌を話す鳥なんていないよね?

2023/06/08

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