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炉辺の風おと

炉辺の風おと

炉辺の風おと

作家
梨木香歩
出版社
毎日新聞出版
発売日
2020-09-19
ISBN
9784620326504
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ジャンル

炉辺の風おと / 感想・レビュー

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アキ

八ヶ岳の山小屋の炉に薪をくべて火を熾し、森の書斎で原稿を書く。窓の外に鳥が啼き、嵐の夜には木々が飛ばされそうにしなって森の音が聞こえる。東京と山小屋を行き来する生活が目に浮かぶよう。毎週新聞に連載していた文章は、装うこともなく生々しいその時々の思いを伝える。気になった言葉、ふと気づいた思いがけない植物、父の死、読みかけの本のこと。60歳近くになり、背骨の骨折、聴覚の低下などもう若くはない体を、立ち枯れしたウバユリに自らの姿を重ね、人生の最後の一瞬を思い浮かべるようになると、また自然の見え方が変わってくる。

2020/10/23

keroppi

梨木さんの美しい文章の中に、子供の頃聴き慣れた熊本の方言「とぜんなか」が出てきて驚いた。「寂しい」を意味する言葉だが、「徒然なか」と書くそうだ。「徒然」と言えば「徒然草」を想起し、「つれづれなるままに」のフレーズが頭に浮かぶ。退屈な様を言っていると思っていたが、寂しさも意にあるようだ。「孤独であることは、一人を満たし、豊かであること。そして、その豊かさは、寂しさに裏打ちされていなければ。それでこその豊穣、冬ごもりの醍醐味。」コロナの今、染み入る文章だった。

2020/11/06

よこたん

“地方の道を車で走っていて、路肩にカンナの花が咲いていたりすると、思わず目を奪われる。花そのものというより、その花のあった風景が甦り、一瞬時間が止まるのだろう。” 甘さ苦さも混じりこんだ懐かしさが一気に押し寄せてくるような風景の記憶は、私にもある。パチパチと不規則に薪のはぜる音、ちろちろ時にはボワッと揺らめく焰に、そっと手をかざし、誘い込まれるようにうつらうつらしながら、静かに語られる言葉に耳を傾ける。そんな雰囲気を味わえた。梨木さんの自然への眼差し、日々の出来事、生きることへの思いと願いが綴られている。

2020/11/14

しゃが

よかった、温かく細やかな霧雨のように心に沁みいった(霧雨が温かいとは矛盾があるが)。新聞掲載のエッセイらしく読みやすく、梨木さんの感性がその筆により、あたかも私の目になり、耳になり、五感になっていった。八ケ岳での山小屋暮らし、自然への寄り添い、鳥や植物への目線から、そして、ご家族、コロナ禍の思いまでうらやましくなったり、つらくなったりと。一番共感したのはホウセンカ、マツバボタンに無性に懐かしい花で、花があった風景が甦り、一瞬時間が止まること。私も民家の庭のダリアやトラノオを見るとふと足をとめてしまう。

2020/10/12

pohcho

山の自然に寄り添い、やってくる鳥たちを眺めながらさまざまに思索を深める、八ヶ岳の山小屋での暮らしを中心に綴ったエッセイ。後半は、お父様の最期、難民問題、コロナ禍などの話題も。広い視野と開かれた心で深く思考すること。そして一人で満ち足りてきげんよく過ごせる力も大切だなあと思う。変わりゆく世界で自分はどう生きるのか。梨木さんの言葉を頼りに、右往左往しながら自分なりの答えを探していきたい。

2020/10/30

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