ひきこもり図書館 部屋から出られない人のための12の物語
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「ひきこもり図書館 部屋から出られない人のための12の物語」のおすすめレビュー
カフカ、星新一、萩尾望都…「ひきこもり」がテーマの必読名作群――部屋の中で、何が起きるの
『ひきこもり図書館 部屋から出られない人のための12の物語』(頭木弘樹/毎日新聞出版)
『ひきこもり図書館 部屋から出られない人のための12の物語』(毎日新聞出版)は、カフカやゲーテの翻訳もある文学紹介者・頭木弘樹氏が編んだアンソロジーだ。主人公が特定の空間に長時間幽閉されたり、孤独と向きあったりしてきた作品を並べたもので、小説のみならず、手紙や日記、詩や漫画なども所収している。
カフカ、星新一、萩原朔太郎、エドガー・アラン・ポー、萩尾望都らの作品を、「ひきこもり」というキーワードのもとに同一線上に並べ、一冊の本に編む。まず、その頭木氏の卓越したセンスと審美眼に感服させられる。頭木氏が偏愛し、世に知らしめたいと考えた作品で構成された本書は、「図書館」というよりは頭木氏の「セレクトショップ」を覗いているようだ。
実際、筆者は本書をきっかけに未読だった作家や作品に触れ、読書欲をおおいに刺激された。特に、自国ではすでに評価の高い韓国の小説家、ハン・ガンの掌編「私の女の実」には感嘆させられた。そのシュールでいびつな作風は、日本で言えば村田沙耶香などに近い…
2021/3/28
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ひきこもり図書館 部屋から出られない人のための12の物語 / 感想・レビュー
鉄之助
「ひきこもることで、人はさまざまなことに気づきます」。冒頭の 館長(頭木弘樹)からのご挨拶、でグッと読む気になってしまった。副タイトル「部屋から出られない人のための12の物語」とあったが、そうでない人にも魅力的な掌編が集められたアンソロジーだった。鬼退治に行かない『桃太郎』、ひきこもっている間に忘れられた結果の『死なない蛸』、物言わぬ植物となってしまった妻『私の女の実』…。この本に集められなかったら、どれも読めなかったような逸品揃い。コロナ時代の今、だからこそ読みたい1冊だった。→
2022/04/12
青乃108号
アンソロジーは、いろいろな作家のいろいろな作品を1冊で楽しむ事が出来るので、おトク感のある本なのだけれど、この本に関しては何故かホームセンターとかで売られてる、1980円の【70年代ベストヒット】みたいなタイトルのCDの様に安っぽく思えた。印象に残る作品はいくつかある(特に宇野浩二の「屋根裏の法学士」は凄く良い)のに、全体でみるとただごちゃごちゃ詰め込まれた印象で、良いとは言えない。
2022/04/13
aquamarine
ひとくちにひきこもりと言ってしまっても、どれだけたくさんの事情があるのかとハッとさせられる。病気で外に出られないのはもちろん宇宙船の中だって一種の究極のひきこもり状態だ。まずは心許ないふわふわした状態に冷たい手をすっと差し込まれたようなラストに鷲掴みにされた萩原朔太郎「死なない蛸」。星新一「凍った時間」や梶尾真治「フランケンシュタインの方程式」のようなオチのはっきりしたものもいいが、好みはハン・ガン「私の女の実」。唯一の漫画萩尾望都「スロー・ダウン」もお気に入り。出会えてよかった。一つ一つじっくりと堪能。
2021/05/23
☆よいこ
[死なない蛸/萩原朔太郎]忘却飢える[ひきこもり名言集/カフカ]手紙に書くか[桃太郎]鬼退治に行かない。寝たろうか[凍った時間/星新一]サイボーグは差別され隠れ住む。しかしテロが起こり[赤い死の仮面/ポー]外のことはどうでもいい[病床生活からの一発見/朔太郎]エッセイ[フランケンシュタインの方式/梶尾真治]SF。宇宙船内残り少ない酸素[屋根裏の法学士/宇野浩二]ニート[私の女の実/ハン・ガン]植物化[静かな水のほとりで]ロボットと会話[スロー・ダウン/萩尾望都]漫画。手あて[ひきこもらなった~]吉備津の釜
2022/01/21
アナーキー靴下
面白かった! アンソロジー本なら3割楽しめれば良い方だろうと思っていたら、全作品面白い驚異の書。気付けば頭木弘樹さんが関わった本は何冊か読みたい本に登録済みで、これは初めて読んだ頭木さん本だけれども、いきなり大当たりで他の本も期待が膨らむ。収録作で一番好きなのはロバート・シェクリイの「静かな水のほとりで」。小惑星にたった一人暮らす人間と詩人なロボット、だなんて…。この本で初めて知った作家なので嬉しい。萩原朔太郎「死なない蛸」、星新一「凍った時間」、宇野浩二「屋根裏の法学士」も良い。いや、やっぱり全部良い!
2021/04/15
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