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昨日の世界〈2〉 (みすずライブラリー)

昨日の世界〈2〉 (みすずライブラリー)

昨日の世界〈2〉 (みすずライブラリー)

作家
シュテファン・ツヴァイク
原田義人
出版社
みすず書房
発売日
1999-03-11
ISBN
9784622050353
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昨日の世界〈2〉 (みすずライブラリー) / 感想・レビュー

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松本直哉

各国語に訳される人気作家から一転してユダヤ人ゆえのナチスによる焚書、亡命先の英国で大戦勃発とともに敵国人扱いされてさらに南米へ亡命。運命に翻弄された生涯にもかかわらず、最後のページの、自殺を目前にした自筆の遺書は美しい筆跡で周囲の人々への感謝が記され、錯乱のかけらもなく、最後まで明晰な理性の人だったのだと思う。ウィーンというヨーロッパの中心にあって他国の文化人と広く交わった著者は欧州を待ち受ける危機をいちはやく感じ取っていたにもかかわらずその警告は相手にされなかった。失われた故郷への限りない哀惜が胸を打つ

2021/01/20

「歴史は、同時代人には、彼らの時代を規定している大きなさまざまな動きを、そのほんの始まりのうちに知らせることはしない」(528頁)20世紀前半の激動の時代に、世界がどこへ向かうのか、当事それを正確に予見できた人はいない。第一次大戦前も、ヒトラー台頭時も事態がこれほどまでに悪化するとは誰も思わなかった。まだ理性への信頼があった時代だったからだろうか。より変化の速い現代でも、どこか楽観的に考えてしまう雰囲気があり、そうこうしているうちに今生きている世界が「昨日の世界」になるかもしれない、などと考えてしまった。

2022/05/09

風に吹かれて

ツヴァイクが1940年に書いた本著作には彼が交流を深めた多くの人々が登場する。ヒトラーの軍靴がヨーロッパに響き渡ると故国オーストリアを離れ流浪の人となり、1942年、ブラジルで自死するのだが、イギリスにいたときオーストリアを離れたフロイトとの交流を描いている箇所は一編の静かな映画を見ているようだった。 前半で彼の青春とともにヨーロッパの青春を描き、後半では再び戦争に向かうヨーロッパと、そして彼自身の終焉を書いた。第一次世界大戦時の尽力を第二次世界大戦でも繰り返す気力がツヴァイクにはなかった。➡

2020/01/31

ぱなま(さなぎ)

ヒューマニズム、精神的結合、ヨーロッパの統合、そのために人生をささげたツヴァイクが、第二次世界大戦のさなか絶望を覚えて自ら死をえらんだことを悼む。そしてそこにさえ彼の思想における一つの美意識が貫かれているとさえ思えてしまうところもまた悲しい。『昨日の世界』の時点では、この戦争を乗り越えた後にまた一から作り上げる時代がくるという希望の示唆もあるわけだけれども、その一方で、老齢を迎えてユダヤ人として追われ、故郷を失ったまま放浪を繰り返すことに疲れ、新しい時代を見届ける力がもはやないと感じていることも痛いほど→

2020/05/24

貴人

ツヴァイクだけでなく当時の人々が信じていた進歩、平和、ヨーロッパの協調、権威への信頼、全ての事柄が戦争によって失われた。今ままでの戦争とは違う、万民の万民に対する闘争。ラジオが、交通の進歩が、人々を世界と結びつけた力は恐怖と暴力まで広めてしまった。かけがえのない物を失って、ヨーロッパは文化と平和を渇望する。しかし、フロイトが予言したように人類のタナトスとも言うべき根源力は、より正気でない熱狂という呪われた甘露に世界を導く。エラスムスやモンテスキューの著作に込められた想いが痛切に心に響く。

2015/01/30

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