生きがいについて (神谷美恵子コレクション)
生きがいについて (神谷美恵子コレクション) / 感想・レビュー
mukimi
文献レビューと著者の考察が織り交ぜられた壮大な論文のような一冊。生きがいを失った時人間はどう生きたかを、多くの偉人の作品をもとに筆者の誠実で繊細な言葉で我々に伝えてくれる。子育ての為当直に入れず、職場での存在意義を疑う日記は現在の女医の多くに通じるがその欲求不満を執筆に捧げた情熱に感服。自分の人生を、疲労と退屈に磨耗させてはいけないと強く思わされた。自殺を踏み止まらせるのは好奇心/攻撃心/名誉心という記載に納得したが、現代人はそれらに加え、人との繋がりの欠如や過労という新たな敵に直面しているのではないか。
2020/07/19
はっせー
心の問題を深く理解した人におすすめの本になっている。久しぶりに読んでいて頭の顎で噛み砕けない本だなって思いました!でもめっちゃ理解できないわけではなく手を伸ばせば届きそうなところにある。その距離感が絶妙。生きがいについて。私達が悩んだことがない人はいないのではないかと思うテーマ。その中ではりあいという言葉が出てくる。私なりにはこのはりあいという糸が切れてしまったりたるんでしまったりしたら生きがいが持てなくなってしまうのかなと感じた。再読したらまた新しい発見があると思う作品であった!
2023/02/27
めろんラブ
「私の棺に入れて欲しい本リスト」の筆頭に鎮座する著書。学生時代、ある分野を専攻していた方々には懐かしい一冊では。初版は1966年。名著の定義は数あれど、100年を経てなお読み継がれるものはそれに当たるのではないでしょうか。本書が約50年後、刷を重ねて読まれている・・・その期待を私の生きがいといたしましょう♪ちなみに、タイトルはいかにもそれっぽいのですが、自己啓発書やHow to本の類ではありません。一般書寄りの学術書かと(逆?)。優しさゆえの大いなる苦悩が圧巻。知の巨人の神々しさに鳥肌。
2013/08/18
molysk
生きがいとは何か。ひとは生きがいを失ったとき、どのように新しい生きがいを見いだすのか。ハンセン病診療所で精神科医として患者に接した筆者は、将来になんの希望も目標も持たないひとと、生きるよろこびにあふれているひとに出会う。このちがいはどこから来るのか。精神医学のみならず、心理学、文学、哲学、伝記などにおよぶ広い素養と、生い立ちから得られたキリスト教への深い理解が、筆者に生きがいという概念の提示を促したのだろう。物質的な豊かさが、心の満足感や生きがい感に結びつかない。現代人の直面する困難に、示唆をあたえる。
2021/04/18
aika
希望、というものを、失っては得て、得ては失うことを繰り返して、人はその人だけの本当の幸福を噛みしめることができるのかもしれません。世間から隔離されていたハンセン病患者の方々が、どう苦しみ生きがいを喪ったのか、またどう生きがいを再発見したのか。幅広い分野からの引用に加え、実際の患者さんの手記や肉声の、その人生の底に流れるものに触れたとき、静かな心の揺さぶりと問いがこちらに向いてきます。読者自身のこれまでと今を肯定するこの本は、生きがいを自分に向かって再発見し、未来に歩を進める始発点になるのだと思います。
2019/05/11
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