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あしたの幸福

あしたの幸福

あしたの幸福

作家
いとう みく
松倉香子
出版社
理論社
発売日
2021-02-19
ISBN
9784652204177
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あしたの幸福 / 感想・レビュー

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モルク

父子家庭で中2の雨音は、父の急死により幼い頃雨音を置いて家を出ていった母国吉さんと暮らすようになる。そこに父の婚約者であり身重の帆波も加わり奇妙な同居生活が始まる。対人関係が苦手で言葉をそのまま受け取り融通も機転もきかない国吉さんと、天真爛漫な帆波のコントラストがいい。雨音をはその生活環境からか、人と距離を取ってしまい飛び込むことができない。鬱の母親を抱える幼なじみの廉太郎とも、お互いがわかる分弱音を吐けず、相手を慰める言葉もためらってしまう。子供は逃げ出せない。大人の一言が子供を傷つけることもある。

2021/06/02

ちゃちゃ

思春期にある少女の繊細な心の襞を、実に巧みに描いた作品だ。中学2年生の雨音は、父親と二人暮らし。ある日突然父親が事故で他界し、一度も会ったことがない実母と、父親が再婚予定だった女性と同居することになる…。さらに、ヤングケアラーである親友との関わりの中で、一つのテーマが浮上する。「守られなければいけないのは、子どもです」子どもを守るはずの大人が、逆に逃げ場のない子どもたちに寄りかかり無意識のうちに苦しめる。多忙な親、病気の親を気遣う子どもの優しさがとても切ない。子どもを見る作者の確かな目を感じさせる良作だ。

2022/07/28

Ikutan

中学2年雨音は父子家庭。再婚予定だった父親が、事故に合い死んでしまった。おばさんが一緒に住もうと言ってくれるけど、雨音は今まで暮らした家を出たくない。そこで別れた実の母親を利用することにしたのだが..。実の母親国吉さんはヘンなひと。空気が読めず思ったことを口にしてしまう。ある日、妊娠中の父親の婚約者帆波さんが訪ねてきて三人の同居生活が始まる。明るい帆波さんと性根は好い人の国吉さん。ヤングケアラーの問題を抱える幼馴染みの廉太郎。色々あるけど、それぞれの温かな愛情に包まれ一歩を踏み出した雨音。清々しい読後感。

2021/06/12

はる

好みです。いとうみくさんらしい繊細な物語。突然父親を事故で亡くした中学2年の女の子が主人公。幼い頃に出て行った母親と同居することになるが…。痛くて切ないのに、優しくて温かい。母親である国吉さんがいいキャラクター。あまり現実的ではないかもしれないけれど、重くなりがちなストーリーの中で不思議な味わい。いとうみくさんの描く何気ないやりとりがじんわりと沁みる、優しい物語。

2021/03/29

しゃが

父子家庭の中2の雨音は事故で父を亡くし、幼い頃に家を出た実の母が保護者になり、同居する選択をする。捨てられた娘と捨てた母の薄い感情の暮らしに、父の婚約者が同居し、また不思議な生活がはじまるが…。最初は辛いストーリーだった。が、中二女子の戸惑い、微妙な揺れ動く思いが切なかったが、亡くなった父、離れていた母の、婚約者の思いに愛され支えられていると実感。病の母の介護をする廉太郎とは辛さを思いやる友情もよかった。中2の子たちに自ら選択させる切なさもあったが彼らの成長は頼もしかった。いとうさんらしく好みだった。

2021/04/04

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