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大発作

大発作

大発作

作家
ダビット・ベー
フレデリック・ボワレ
関澄かおる
出版社
明石書店
発売日
2007-07-24
ISBN
9784750325903
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大発作 / 感想・レビュー

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ケイ

兄が癲癇の発作を起こしてから、僕と妹、そして家族の生活は変わってしまった。とにかく治してあげたいと、両親は医者探しに明け暮れ、次々に怪しげな新興宗教や民間療法に頼る。遊んでくれた大きなお兄ちゃんが戻ってくれるのを、心の片隅で待っていた作者。しかし、その負担は重荷となり、作者も妹もどこかで兄の死を願う。発作により、身体が傷だらけになる兄。見捨てられないから生まれる苦悩。 最後の数頁ずつの短編は、それまで描かれたクロノロジーの集大成のような心の叫びだと思った。

2016/06/23

扉のこちら側

2015年1060冊め。【59/G1000】以前英訳で読了、邦訳で再読。「世界は僕らを拒絶する、だから僕は幻想の世界に生きる」(P198)英訳の時にもやもや感じたものが邦訳を読んでまとまったのだが、P261でてんかん患者の兄が障がい児達の活動を見て「僕、障害児たちの先生になりたいな」と言うシーン。母は「(お前は)自分の面倒だって見られないじゃない!」と切り捨てる。現代では「ピア(仲間)」という概念があり、病気や障がいを持つ人同士が語り合うことで克服や回復・改善を目指し、当事者主体の自立生活を 続

2015/09/18

NAO

再読。障害者に関わるボランティアを長年しているので母親の苦悩はよく聞かされるし、本も読むが、兄弟の視点によるものはあまりないと思う。現代なら家族の会もあって家族の心のケアもしてもらえるのに、いわれのない差別や偏見は、本人だけでなく家族の精神をも疲弊させる。弟は、漫画を描くことで自分の心の平静さを保とうとし、罪の意識を浄化しようとしたのだろう。暗いタッチではあるけれど、なるべく兄に添おうとし、兄を受け入れようとしている作者の優しさ。

2016/06/03

syaori

癲癇の兄を持つ作者の半生を描いたバンドデシネ。語られるのは兄の病と家族との闘いで、医学や錬金術、交霊術等あらゆる手段を試す家族の姿が描かれます。画面には何もできない焦燥や、兄や両親への愛、不満、不公平感、孤独などの感情が渦巻いていて時に息が詰まるほど。作者は物語を作ることが「不幸を祓う」「魔法」なのだと言いますが、健康だった兄を求めるのではなく現在の病の兄を優しく見詰めるエピローグからは葛藤を癒し成熟に導く物語の力を見るようで、分かり合えない、しかし愛してやまない兄への思いと相まって胸が一杯になりました。

2020/06/04

くさてる

てんかんの兄と兄を救うべくマクロビをはじめとする様々な療法や神秘主義に手を出しては裏切られる家族の物語。弟は成長するに従って、兄の病に囚われている自分自身の存在にも苦しむようになって…。単なる子供時代の思い出話から抜けだして世界が幻視的になり、広がっていく一コマ一コマがそのまま幻想的な絵画になりそうな濃さ。好きとはいえない。でも絶対に否定は出来ない。ただ圧倒されました。

2013/10/19

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