オリーヴの小道で
オリーヴの小道で / 感想・レビュー
麻衣
名前はもう忘れてしまったけど、旅行先でとても小さな画廊に入ったときのことです。わたし拇印を失くしてしまって。受け取るはずだった8色目のスペクトラムも手にできずに、ひとはそんなわたしを色眼鏡でみます。窮屈そうに『静物』はしんとして、弱い昼の光にきらめく埃以外、誰もその場を動かない。据え付けられた置き物のような老女の目の中には数多星が浮かんでいるが、それに気づく者はほとんどいない。ただひとりの猫を除いて。曇りの午後にカプチーノの湯気が立つ。あてどもなくやわらかく、ただ時だけが世界に溶けていきそうになる。
2021/04/12
R子
再読。亡くなったはずの夫と毎日家路を共にしたり、画家が自分の描いた絵の中に誘ってきたり。その不思議を引き寄せるのは、主人公マリアが1人暮らし(+猫1匹)で美術館勤めという静かな日々を送っているからか、それとも死が迫っているからなのか...。いずれにせよ、穏やかで心地の良い世界観だった。
2014/11/25
ヒラP@ehon.gohon
今江さんがモランディの絵に魅せられて、熟成した物語。 宇野亜喜良さんの絵と融合されて、とても粋でしっとりとした作品です。 モランディ美術館でキップ切りをしているお婆さんは、ねこと二人暮しですが、死んだ夫の思い出と、モランディの語りかけるような絵に包まれて、平穏な日々を送っています。 モランディの絵を見たくなりました。
2016/09/12
まゆ
すごーく夢見心地、文章も絵も。すてき。そのまま死んじゃうのかな。
2016/02/03
読み人知らず
生と死の境が溶け合うような感じ。こうやって死を迎える人がいてもいいなと思う。
2010/07/08
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