ナラティヴと共同性 ―自助グループ・当事者研究・オープンダイアローグ―
ナラティヴと共同性 ―自助グループ・当事者研究・オープンダイアローグ― / 感想・レビュー
ワッピー
OPD関連2冊目。ナラティブ・アプローチ、当事者研究、そしてルーツの1つとしての自助グループ(特にAA)の流れからつながるオープンダイアローグ手法への橋渡しを丁寧に追った論考集。ストーリーを重視し、現時点で動かしがたく見える「ドミナント・ストーリー」から個人の「オルタナティブ・ストーリー」を生みだし、問題を解決もしくは解消していくというナラティブに対し、患者たち自身が自らを研究対象とする当事者研究による問題の共同化、そして物語ではなく、患者を取り巻く人間関係を変化させるOPDの比較は、医療における対話↓
2019/07/12
りょうみや
ナラティヴアプローチの本2冊目。精神医療に主に適用されている話だが、人生やアイデンティティを物語として考えることは日常のコミュニケーションにも十分役に立ちそうなので読んでいる。ナラティブと発展型のオープンダイアローグについても詳しい。著者の論考集のため同じ話題が重なって何度か述べられるがそれによって理解が深まる。精神医療もコミュニケーションを掘り下げていくと根本はやっぱり「愛」に行くつくらしい。
2020/10/26
しゅん
世界が言葉を作るのではなく、言葉が世界を作るという反転認識を特徴とする社会構成主義。本書はその思想をベースに展開される精神医学(あるいはもっと広く、人が人と関わりあう試みすべて)の新たな概念群を、それぞれの違いを紐解きながら紹介・検討していく。今の世界で「物語」をどう扱うかは非常に大きな問いだと思っていて、本書で描かれる「物語の語り直し」には一つのヒントが含まれていると感じる。自分自身を研究対象とする、そして愛や感情の機能を無視せず医療に導入するという姿勢は、人が言葉を扱う際に今後必要になる発想だ。
2020/08/14
センケイ (線形)
物語を応用する観点も、当事者研究も興味あるものであり惹かれたが、その延長線上にある、共同性自体を構築する方法論に魅力を感じた。精神ないし感情における解決したい課題を、個人の病理とみなすやり方は一見自明かに見えたが、それを相対化できるオープンダイアローグという方法があるという。下手にレッテル貼りをしない点でも、症状というよりは置かれている環境自体を(共同性をもたらすことで)充実させる点でも、期待できる方法だ。また文体として、わずかに冗長かもしれないが非常に関係性が読みやすく、一読で多くの理解が得られる良書。
2020/03/31
コジターレ
良書。複数の論考をまとめたものなので、多少重複するところがあるが、くどいと感じることはなく、かえって理解を深めるのを助けてくれる。特にナラティヴとオープンダイアローグの関係についての論考が興味深かった。
2022/07/22
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